こたつむり

夜は短し歩けよ乙女のこたつむりのレビュー・感想・評価

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
4.0
★ 荒ぶる浮遊、詭弁を弄して夜を騙すな

うーん。良質な小説を読み終えた気分。
とても素敵な物語でした…が、賛否両論になるのも当然だと思いました。

何しろ、情報を詰め込み過ぎなのです。
絵柄はシンプルながらも、台詞の隅々まで仕込まれた伏線。また、独特の台詞回しも口語より文語に近く、活字に慣れていなければ糖分が欲しくなるのは必至(しかも早口でまくし立てるので…)。

ただ、それさえ許容してしまえば。
熟語が立体的に飛び交う雰囲気と、ロマンチカが弾けたような香りはフルーティでジューシー。根底に流れる酩酊したペシミズムが娯楽に昇華する気分で口角が上がること間違いなし。

物語としては“繋がり”を描いた王道。
それは蜘蛛の巣のように張り巡らされた濃密な言葉。そして、青春の大河に流れる小枝のように翻弄されながらも愉悦に浸り、気付けば肩が上下しているのです。げげげっ。

また、個人的にツボだったのは「詭弁踊り」。
あれを映像化しただけでも本作の価値はありますよ。うん。僕も詭弁を弄しますからね。機会があれば踊ってみたいものです。

そして、何よりも素晴らしいのが声優さん。
クセの強い物語ですからね。やはり、声(ヴォイス)で作品世界を下支えするのは重要。特に花澤香菜さん(主人公)、中井和哉さん(樋口さん)、神谷浩史さん(事務局長)の存在感は見事でした。

あと、さり気なく音楽の使い方も巧みでした。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのエンディングテーマも作品の雰囲気に合っていたと思います。

まあ、そんなわけで。
文系芸術の最高峰に位置するアニメ。
確実に誰もが楽しめる娯楽作…と言えませんが、活字の海に耽溺することを厭わないならば、物語との親和性は高いと思います。文字と文字の隙間に挟まってグブグブしましょう。

あと、鑑賞後に知りましたが。
『四畳半神話大系』というアニメとも繋がっているみたいですね。機会があれば、こちらも観てみたいなっ(←この小さい“っ”が可愛さの秘訣)。
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