わたがし

怪盗グルーのミニオン大脱走のわたがしのレビュー・感想・評価

5.0
 怪盗グルーの三部作の中では1番好きかもしれない。「怪盗グルーのミニオン危機一発」とか「ペット」のマイルドなどうでも良さと、「SING/シング」の常人を突き放した倫理観の欠如が上手い具合に絡み合って、イルミネーションアニメの集大成のように感じた。
 ピクサーやディズニー的なハイクオリティなストーリーを語る気は全くないし、基本的にはふざけていたいし遊んでいたい!!!という一時期のドリームワークスとは別の意味での(というか単純にレベルの低い)反骨精神みたいなものが今回も炸裂していて本当に気持ち良かった。こういう映画を観ている瞬間が一番しあわせで、こういう映画を自分も作りたいんだなとしみじみと再認識した。
「今この社会において語られるべき」テーマよりも「今俺達がこれ語るといい感じじゃね?」みたいなテーマが優先されている(一応子供をターゲットにすべき作品ではあるのに)ストレートな下品さがすごくて、それも大して切実そうでもなかったりする瞬間もあるので思いつきで描いているように見える。イルミネーションのこの感覚が一時期めちゃくちゃ嫌いだったんだけど、なぜかここまで「こういうのも一応描いとくか~!!!」みたいに大袈裟にやられるともはや気持ち良いというか、やっぱりシングがめちゃめちゃ好きだったので多少贔屓目にもなってるのかもしれない。
 そういう割とどうでもいいテーマ乱れ撃ちの中でもやっぱり強烈にぶっ刺さる瞬間もあったりして「アニメでこんなこと描くとか反則じゃん!?!?」みたいな猛烈な感動もあったりして、グルーのアイデンティティが揺れる場面で何だか自分のアイデンティティまで揺さぶられているような感覚に陥って、正直めちゃくちゃ泣いたところもあった。
 クライマックスも「一応伏線とか回収しとくか~!!」みたいないい加減さを孕みつつも狂人の沙汰としか思えないような細かいアクションがあったりもして、この映画を作っている人たちの「何に拘って何に拘らないか」の基準も正直自分には全くわからなくて、そういう謎も含めて物凄く好きな映画だった。二作目の時も思ったけどルーシーがマジでドンぴしゃで好きな異性のタイプ。
わたがし

わたがし