Inagaquilala

いぬやしきのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

いぬやしき(2018年製作の映画)
3.7
予想に反して、なかなか楽しめる作品だった。コミックはほとんど読まないので、「GANTZ」はおろか、この原作の存在もまったく知らなかったのだが、このタイトルで、この作品とは、正直、驚きを禁じ得なかった。とにかく、ラストの西新宿上空250メートルでの空中戦には手に汗握ったし、人間のからだを機械化して武器へと変身させるシーンにも目を奪われた。それこそハリウッドからリメイクのオーダーが入りそうな特殊撮影を駆使したアクション作品だ。

主人公の初老のサラリーマン犬屋敷壱郎を演じる木梨憲武が、また見事にハマっている。会社や家族からも疎まれ、そのうえ医師から余命3か月の宣告を受けた主人公が、突然、世界をも変えてしまう強力なパワーを身につけるのだ。この落差の激しい主人公役を、木梨ならではの性格演技でペーソス豊かに演じている。

対する、もうひとりの超人パワーを身につけた獅子神皓を演じる佐藤健もいい。佐藤には珍しく人を殺すことのいささかの躊躇いもない完璧な悪役を、彼独特の視線の演技で、これまた素晴らしい演技を披露している。この木梨と佐藤のキャスティングが、荒唐無稽ともいえる物語に人間的なリアリティを与えていると言っても良いかもしれない。

とは言っても、この作品の見せ場は、圧倒的な空中戦を含めた、後半のアクションシーンだ。馴染みのある西新宿の高層ビル群を舞台にして展開されるこの場面は、近頃観た日本映画のなかでは出色の出来だと思う。「アイアムアヒーロー」では、やや残念な思いを抱いた監督の佐藤信介だが、この作品ではまるで吹っ切れたようなアクション映像を撮っている。あまり難しいことは考えず、とにかく遊園地のアトラクションのように楽しむ作品かもしれない。
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