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いぬやしきのmのレビュー・感想・評価

いぬやしき(2018年製作の映画)
4.3
VFXとアクションのクオリティは半端ではなくて、特にクライマックスでは日本映画史に残るような一大空中戦が繰り広げられて思わず興奮した。このシークエンスは本当に凄い。
空中戦前の歌舞伎町殺戮パニックもよくこの場所でこれだけ撮れたなと感服するような群衆シーンで、作り手の実力と気合の入りっぷりに敬意を抱く。

撮影・照明の技術面も優れていて、ルックが美しいだけでなくカット割やカメラワークもしっかりと映画的に考えられて良い。

冷徹に見えながら人間的な矛盾を持つ悪役に、こういう低体温な役がぴったりと合う佐藤健が適役。涼しい顔で映画の大ウソを体現する彼の演技が一貫して映画を支えている。

どうやってもとぼけた風情があって良くも悪くもシリアスになりきらない木梨憲武、頑なな娘役の三吉彩花も印象的。他の人がやっていたら酷い事になっていたであろう役柄を短い登場時間で成立させた二階堂ふみは流石だが、やはり勿体無い気もする。

それにしても佐藤健の父親がなんと渋川清彦で(そして母親は斉藤由貴、つまり渋川清彦と斉藤由貴がかつて夫婦だったという世界線なのだ)、凄いキャスティング。
「退屈な日々にさようならを」で「なんすか?」とガン飛ばしてたGO!娘の秋葉美希がチラチラと登場していて個人的にはちょっと嬉しい。



残念なのが、脚本の段階で茶番めいた事になってしまっている場面を演出がそのまま放置して素直にやってしまう為に、完全に茶番になってしまっているシーンが結構ある事(それ故に中盤がダレる)。それでも同じ組の「GANTZ」や「デスノート LNW」よりは全然マシなのだけど。
あと音楽(特に前半)がややオーバーになり過ぎている。


個人的に残念だった事が2点あった。ここから先は人によってはもしかすると少しネタバレと感じるかもしれないので、避けたい方はここで御遠慮下さい。
















1つがこれはごく個人的な感覚から来るもので言い掛かりに近いのかもしれないけれど、クライマックスの空中戦の途中で、ヘリから女子アナが落ちてあっさりと(でも冷静に考えたらとても残酷に)死ぬ所。
あのさっくりとした残酷さも死のリアリティと言えばありなのかもしれないけど、一応ヒーロー映画の体裁を取ろうとしているのに妙にあの死がノイズになってしまって、あれ以降の犬屋敷さんの活躍に素直にカタルシスを感じる事ができなかった。あれは必要無かったのでは?ヒーロー映画でありたいなら、せめて助けようとして助けられないくらいの演出が欲しいと思ってしまった。
まあその前に無差別殺戮が起きてるし、その後も都庁内で佐藤健が人をさくさく殺すのだけど・・

2つ目が最後の最後にやってくるエピローグで、これはもう甘過ぎた。この結末を迎えるには、この映画はあまりに大量の無意味な死を描き過ぎている。
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