マヒロ

クルエラのマヒロのレビュー・感想・評価

クルエラ(2021年製作の映画)
3.5
幼い頃から学校のルールを破ったりと型破りな行動を繰り返すなど反骨精神の塊であるエステラ(エマ・ストーン)は、実はファッションに興味があり、著名なファッションデザイナーであるバロネス(エマ・トンプソン)に憧れを抱いていた。ひょんなことからそのバロネスに目をかけられたエステラは自身の才能を開花させていくが……というお話。

『101匹わんちゃん』のスピンオフとしてヴィランのクルエラの誕生を描いた作品。
70年代のロンドンが舞台になっていて、音楽映画でもないのにその年代あたりのロックナンバーがこれでもかというくらい流れまくるのが印象的だった。
クルエラという人も、まさに70年代に生まれた反権威としてのパンクロックのような立ち位置として、ファッション業界で巨大化していたバロネスに反旗を翻す形でその力を強めていくことになる。
既に才能が枯れてしまっているのか、部下のアイデアにケチをつけるぐらいしかやっていないバロネスを新進気鋭のアイデアで翻弄する姿は痛快だし、演じるエマ・ストーンのコロコロ変わる表情が魅力的。

ただ気になるのが『101匹わんちゃん』の前日譚としてはどうなのか?というところで、アニメ版のクルエラと手下のジャスパー&ホーレスはダルメシアン達を狙うまごう事なき悪役で、犬の命とかなんとも思っていない横暴さが恐ろしかったんだけど、今作では相棒の犬がいたりわざわざセリフで「ダルメシアンには手を出してない」と言わせたり、言い訳のように犬への優しさを押し出してくるところに違和感があった。
クルエラも特徴的なあの毒ガスみたいなタバコを吸ってないし(これはタバコを劇中に出してはいけないというディズニーの方針かららしい)、仲間達にあなたは家族だとか言い出すなど小綺麗なキャラクターになっており、過激な部分は見せつつも超えると危ない一線はなんとか超えないようにバランスをとっているところが見えてしまうのがちょっと白々しさを感じた。『アイ、トーニャ』のクレイグ・ギレスピー監督と『女王陛下のお気に入り』の脚本トニー・マクナマラが組んだということで凄い話を期待していたんだけど、現場レベルではどうにもならないディズニーという会社の影響力があるんだろうなぁ。

物語としては明確に『101匹わんちゃん』に繋がるような目配せがそこら中にありながら、肝心のクルエラ達一味の描写が食い違っているので違和感が拭えなかった。この映画の後に何かとんでもないことが起きて邪悪な犬殺しに変貌するという可能性もなくはないが、今のディズニーはそこまでやらないだろうなと思えてしまう。映画としては普通に面白いんだが、悪を描くにしては踏み込んだ描写が無くて熱狂は出来ない感じ。

(2021.91)[4]
マヒロ

マヒロ