こたつむり

クルエラのこたつむりのレビュー・感想・評価

クルエラ(2021年製作の映画)
4.2
♪ 明るみに出た昔の顔と 
  歴史につばをはいてみた
  鏡に写るrealな現在 
  愛せる様にMetamorphose

正直なところ、ナメてました。
「悪役が主人公のスピンオフってヌルいよね」なんて、虹村億泰がトニオさんの料理を食べたときのようなスタンスで臨んだことを告白します。ごめんなさい。

いや、確かにヌルい部分は否めません。
原作である『101匹のわんちゃん』を知らないので《クルエラ》がどんな悪役かも知りませんが、完全なサイコパスとは思えず、どちらかと言えば“人間味あふれる”悪役ですからね。

でもね。これは仕方がないのです。
何しろ、主役のエマ・ストーンの喜ぶ顔、悩む顔、怒った顔…四方八方眺めてもエマエマエマエマエマァァァッと歓喜の声を出しながら転落防止柵をカンカンカンカンと鳴らしたくなるほどに、彼女の魅力が引き出されているので、面白いのは仕方ないのです。

というかね。語り口が上手すぎるんですよ。
大多数が受け入れられるバランスを保持したまま、テンポよく疾走し、更には豪華絢爛でハイセンスなビジュアルで魅せちゃうんですから。うん。面白いのは仕方ないのです。

この辺りは安定のディズニー印。
悪役が題材でも老若男女が楽しめる仕上がりなんですね。ちなみに仕上げたのはクレイグ・ガレスピー監督…なんですけど、本作の場合は監督さんすらも“素材”のような気がします。

つまり、感嘆すべきはディズニーの姿勢。
誰もが楽しめる“娯楽性”と、新しいものに挑む“チャレンジ精神”を両立させる意識。それが監督や裏方から配役までバッチリとハマった結果だと思います。

あと、時代の風も見事に読み切っていますね。
悪役のスピンオフは“ポリコレがうるさい風潮”を無視できる手段。批判されても「悪役だから仕方ない」と言えば良いのですからね。やっぱり、面白いのも仕方ないのです。

まあ、そんなわけで。
コロナ禍が無ければ、もっと騒がれても不思議ではない作品。劇場公開は顕著に数字が出ますけど、ネット配信は目安がないので、本作に“偏見”を抱いてしまうのも…仕方ないのです。
こたつむり

こたつむり