あきしげ

トゥー・ラビッツのあきしげのレビュー・感想・評価

トゥー・ラビッツ(2011年製作の映画)
3.0
練り上げた脚本なのに登場人物が全員クズ。

良かった点。

・散りばめられた伏線の数々
・観ている側を意識した演出
・飽きさせないテンポの良さ

悪かった点。

・登場人物はクズばかり
・強引すぎる展開がある
・ラストの爽快感がない

ブラジル国内で大ヒットしたという作品。
ハリウッドでリメイク権を獲得している。
監督は本作が長編映画デビュー作である。

まさにブラジルらしい犯罪映画である。
社会問題をさり気なく取り上げている。
ブラジル社会での問題を提唱している。
これは決して架空の話しではない現実。
路上での強盗、汚職政治家は当たり前。
大統領でさえ国民の金を巻き上げます。
ブラジルというのはそんな国柄である。

だからリオのオリンピックは奇跡なんです。
本作は大都市サンパウロが舞台となります。
リオは観光都市だけど治安は悪い場所です。
当然ながら大都市のサンパウロも悪いです。

車で信号待ちしているだけで強盗に遭います。
バイク乗りだったり、子供だったりするのです。
特に日系人なんかは格好のカモだと言えます。

夜なんて歩いたら命があるだけでも強運。
そんな場所の犯罪なんて日常茶飯事です。

本作はその一部を描写しているだけ。
本来ならもっと危ない事が起きます。
その縮図を本作は忠実に描いている。

本来ならシリアスな展開だが演出でポップにする。
これによってテンポが良くなって重さを感じない。
そのままやってしまうと重すぎて退屈なだけです。
監督はそこら辺をちゃんと理解している演出です。

本作の脚本は素晴らしいの一言です。
相当練り込んでいるのが分かります。
ですが、失敗しているところがある。

それは登場人物が全員クズという。
そのせいでラストの爽快感がない。
あの笑顔を見ても素直に笑えない。
あまりにもブラックなジョークだ。

やはり、緻密に練り上げた脚本にカタルシスが欲しい。
最後はすべて計画通りに進んでハッピーエンドで終了。
その時に観ている側としてスッキリした気分に落ちる。
ただ、残念ながら本作にはそれがないから致命的です。

登場人物に共感できるキャラがいれば良かった。
そこは忠実に描く必要はなかったと思いました。

ただ、リメイク版では改善するだろうと期待しています。
あきしげ

あきしげ