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サバイバル・ラン -逆行-のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

サバイバル・ラン -逆行-(2015年製作の映画)
3.3
スマホゲームの一つの潮流として“ランゲーム”ってのが有りますね。ひたすら横方向(主に右へ)に進むだけのジャンプアクションゲーム。
映画にも“ラン映画”とでも呼びたい作品群が有りますよ。『フレンチ・ラン』とか『デンジャラス・ラン』『ボーダー・ラン』、あと『シェイプアップ・乱』…はともかく、タイトルの末尾を“ラン”で締める作品というのが一定数有り、これらの共通の特徴は、
⚫︎原題は全く別物
⚫︎B〜級アクション物が多い
⚫︎走るシーンは有るっちゃ有る
…などです。大抵は、地味な映画の売り方に迷った配給会社がなんとなく景気のよい感じになるからと適当な単語に“ラン”をくっつけて誕生してるのでしょう。
それで、今作は『サバイバル・ラン』と来ましたが…(!実は既に同名の邦題が存在してました!揃いも揃ってなんたる志の低さ!!)


ラオスが舞台。NGO活動で医師として働くアメリカ人のジョン。環境も悪く大変な激務でヨレヨレ。
溜まった疲れを癒すために休暇で南部の観光地の島を訪れた。深夜のバーで見かけたオーストラリア人の男2人組。現地の女の子たちを酔わせ、連れ立って出て行ったが…。
バーで酩酊しフラフラで帰る夜道。暗がりにさっきの男を見かけ声をかけると、側に横たわる着衣の乱れた女性!反射的に激昂したジョンは、男と口論⇨殴り合い⇨撲殺してしまう。しかも、混乱した女の子はジョンのことを強姦魔だと思い込む始末…
という顛末を、傷だらけでシャワーを浴びながら思い出した!!ハングオーバー!
しかも、殺した相手は議員の息子だった!迫る追手!
…そりゃあパニックになって逃げちゃいますわな。



お、お…。この内容に“サバイバル・ラン”とつけなさるか…。いやまあ、“生き残り”に“走った”りもするけれどさぁ。
主人公ジョンにロシフ・サザーランドさん…は、キーファー・サザーランドの弟さんだそうです。自分はキーファーさんの事あんまり知らないので、…どっちかと言えば田亀源五郎先生の描かれる痩せマッチョに似てるなと思いましたけどー。最高の賛辞!
で、基本的に警察から隠れて逃げ回る展開が続くのですが、ここで弾丸が飛び交ったり、バイクで屋根伝いにかけめぐったりすれば“ラン”成立と相成るなのでしょうけど、実際はというとトイレに行くフリをしてダッシュとか、船頭を買収した小舟の中で寝そべって警官をやり過ごすとかで侘しいことこの上無しです…。また、ラオスの警官たちが小さくてねぇ…。ジョンと並んで歩くと頭二つ分差があるんですよね。緊張感無いねー。
いや!そもそもですよ⁈如何に相手に非があろうが、酔った上での失敗だろうが、殺人犯の闘争劇に感情移入なんて出来るわけ無いですよ!
法律がいつ如何なる時も是なんて思う訳は無いですが、実際に逃亡をリアルに描くと、逃げれば逃げるほど次々に法律を破る事になるし、常に不安感に苛まれるし、まあ14歳のガキの言う事とはいえ「逃げちゃダメだ!」に大納得ですよ…。
ところで、この物語がどういう決着を見せるかと言えば…
…なるほどー。

変に奇を衒わない淡々とした撮影は(ブレ過ぎの逃走シーン以外は)悪くない気がします。劇伴も作品に会ってますし、90分切ってくるのも潔くて好印象。発砲シーンも無ければメンター的美女も出ませんし、エクストリームな何かを提供してくれる訳でもありませんが、全然悪くはないと思いました。原題は『River』。じっくり考えれば100%コッチが正解なんですけど、“・ラン作品”好きとしては原題のままだと観なかったかもしれないので良しとします。
…いっそ“・ラン”メソッドでいろんな映画の邦題をつけ直すのも良いかもしれません。
『E.T』⇨『エイリアン・ラン』
『ショーシャンクの空に』⇨『プリズナーズ・ラン』
『風とともに去りぬ』⇨『ゴーン・ウィズ・ウィンド・ラン』
『万引き家族』⇨『ショップリフター・ラン』
『エイリアン』⇨『エイリアン・ラン2』
みたいな感じで…