嵯峨

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルの嵯峨のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

スコセッシ、フィンチャーが好きな人なのですげえ面白かった。本当に「最近スポーツ映画好きかも〜」的なノリで見たらマジで昨日見た「レイジング・ブル」のような話と「グッドフェローズ」の編集・音楽の使い方、あとフィンチャー的ななんというか冷めた目線というか、フラットさやフェアさというかそういものを感じたあたりまあ満点つけないわけにはいかねえなって感じの映画でした。普通に面白いしね。

まあまずナレーションとか、音楽とかテンポが死ぬほど良い編集とかあとワンカット、序盤の衣装室?でいいのかわからんけど、そういうので「グッドフェローズ」を想起せざるを得ないし、それがきっちり楽しい。特にナレーションも笑っちゃう。で、割と全編笑っちゃうんだけど「レイジング・ブル」的なクズが全てを失っても「でも私何事も一生懸命頑張った」っていう切なさが終盤にあって悲しいなあみたいなw、学校の先生が怒った時に言う「悲しい」に近い悲しさがありました。最後らへんの鏡を見ながら泣きながら化粧するところとか、「レイジング・ブル」に鏡に向かって「俺はボス、俺はボス・・・」というロバートデニーロを思い出しました。
クズなんだけどやっぱフィギュアスケート描写がしっかりしてて(CGすげーってなった)、貧乏で性格もクズっていうどうしようもない人間が唯一輝いて見えるっていうこれフィギュアスケートならではのスポーツ描写も良かったです。だからこそ彼女の唯一、承認欲求を満たせる場所感あったし、コトが騒動になりかけの時のあの少女へのサインとか悲しい気持ちになる。

まあ彼女自身もクズなんだけど、それ以上にクズでバカなのがジェフで、またまたそれ以上にどうしようもないのがショーンってもう「クズに底は無いのね」と思わせるバカ集団たち。最初は笑えるバカ集団だったけどバカが加速してって本当にそのどうしようもなさがグラデーションで悲しさに変わっていくのも笑えるけどやっぱ切なかった。音楽とかもちょっと間抜けな感じとかクスッとくるけどコトの重大さがやっぱね・・・。なんで・・・感。

お母さんとかも最悪で、本当に全編毒親って感じだった。だけどラスト「なんだかんだ母親じゃん」と思わせる場面があって、「レイジング・ブル」とか「ソーシャルネットワーク」なんかよりはまだ救いのある話だなあと思って見てたら見事に裏切られるあたり最高だった。あの瞬間の全てを失った感、そしてそっから怒涛のスピードで全てを失ってくわけですがいやあ良かったなあと思います。

で、そっからまさかのボクシングで、「ミリオンダラー・ベイビー」といい「レイジング・ブル」といい「お前ここ数日でどんだけボクシング見てんだよ」って話なんですが、ボクシングは「自尊心の戦い」ということを学んでいただけにスケートのジャンプとボクシングで吹っ飛ばされるところが重なる編集・演出も良かったです。栄光のあの時はとうにないんだけど、それでも起き上がるんすよね。やっぱ、ここも「レイジング・ブル」的だなあと思いました。めっちゃ面白かったです。
嵯峨

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