misty

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのmistyのレビュー・感想・評価

4.5
業が深い映画。強烈に光を浴びた人にはそれだけどす黒い影が焼きつく。ライバル襲撃事件、オリンピック出場権剥奪をめぐる謝罪会見、世間から叩かれる材料を揃えに揃えたトーニャだったけど、トリプルアクセルをアメリカ人女性で初めて成功させたのは、あなたがそれだけ頑張ったから。

揃いも揃ってアホか虐待に走るかのクソ野郎しかおらんところでそれぞれ無い頭を振り絞って考えた計画もまたアホで、そら足つきますわとため息つきたくなる。トーニャは「わたしのせいじゃない」を繰り返すけど、それはたぶん半分は合ってるけどもう半分は嘘なんだろうね、彼女がどう思っていようと。

毒母アリソン・ジャネイ、そこまで言うかね??と開いた口が塞がらないけど彼女に罵倒の限りを尽くされたからこそトーニャの才能と努力が花開いたのかなあと思うと横から見てる者でしかないですが切なくなる。もっと褒めてあげたり労ってあげたりしてたらトーニャのオリンピックはなかったかもしれないのだ。

その人にはその人の運命があって、誰もその人の運命を代わってやることはできない。与えられた宿命を全うするだけ。10人分のカルマを背負って生まれてしまったなら10人分のカルマを引き受けるしかないだけ。燦然と輝くフィギュアスケート界の光と闇、両方で存在感の塊だった人だったんだろうな。

映画としてはみんな保身に走って違うことを証言するからまさに真実は「藪の中」で、客は想像するしかないのだけど、それでも世界初トリプルアクセルを成功させた女性というのは誰が何と言おうと本当のことなのだから、その努力と逆境に立ち向かおうとしたトーニャの反骨精神は純粋に天才だと思ったよ。

しかしいくら過去の話とはいえ相手のあることもあるのに映画化を決める、彼女の人生を脚色するということは制作側にも狂人ぷりが感じられてよかった。それも含めて人間の業とは何かを考えさせられる映画だった。大手を振って良かった!!観て!!と言える作品ではないけど、わたしは観れてよかったよ。
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