TaiRa

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのTaiRaのレビュー・感想・評価

5.0
世代的にトーニャ・ハーディングの事件知らなかったんだよね。O・J・シンプソンのは知ってるのに。皮肉なもんで。

トーニャ・ハーディングと周辺人物による証言で構成されたナンシー・ケリガン襲撃事件の「真相」。人の数だけ真実があり何を信じれば良いかは最後まで分からない。トーニャの生い立ちから語られるがそれは悲惨な話ばかり。鬼ママから殴られ、夫からも殴られる。ごりごりのアメリカン・ホワイトトラッシュな生活から抜け出す為のスケートで栄光を掴むも、やはりバカに囲まれて生きるとそれだけで人生ハードモード。別れた夫のバカの友達の更にバカな友達がナンシー・ケリガンを襲う。ここに登場するバカはもはや災害レベル。爆笑するしかないのだが、これが事実だと思うと少し怖い。トーニャの人生は最後までハードだがラストは感動した。デタラメ人間の一代記を時には観客に語りかけながらロックチューンに乗せて見せるのは、マーゴット・ロビーの出世作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』からの影響だろうが、終着点は『レイジング・ブル』だ。リンクで誰よりも高く飛んだ彼女が最後はリングでのされる。それでも立ち上がる彼女の吐いた血反吐こそ「アタシ」そのものだ。

マーゴット・ロビーのトーニャなりきりっぷりは流石。スケートシーンの撮り方も工夫があって楽しい。10代の頃のトーニャが歯列矯正を気にして上唇でむっと隠す笑い方をするのがさり気なく入ってて良い。大人になってもその癖抜けてないのが細かい。
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