bluemomday0105

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのbluemomday0105のレビュー・感想・評価

3.9
30年ほど前にアメリカ人女性で初めてトリプルアクセルを成功させた天才フィギュアスケート選手。そしてライバルを襲撃し怪我を負わせた疑いで、世界中から憎悪と嘲笑と好奇の目を向けられた悪女。

ちょうどリレハンメルから冬季五輪を見始めたから、トーニャ・ハーディング(とナンシー・ケリガン)のことは覚えてた。靴紐のくだりも。
だから劇中の一連のシーンは「うわ、これ見たことあるわ!」とゾゾっとしたもので。

躾と調教を取り違えたような厳しい母親。気弱そうで最初は優しくても暴力を振るうようになるDV夫。トーニャ含む登場人物の9割がクズで頭悪いという、救いようない環境。

尽く恋人からDVに遭う人、避けようと気をつけても毎度入った会社がブラック企業な人。そういう事例について最近考えるのですが、そういう人は自己肯定心が低い傾向がある、という説があって。
そしてそれは、幼少時の親との関係が非常に影響するとも。

もっと裕福な家庭に生まれていたら、もっとまっすぐに愛情を注がれていたら。どうしようもないタラレバだけど、やはりそう思ってしまうくらいにエンドロールで流れたスケアメのトリプルアクセル、すごい高い位置で綺麗に跳んでた。本当に環境によって人生って変わっちゃうんだなあと…。類まれなる才能を持ちながら、それが全く彼女を救わなかった。それが悲しい。
あんな酷い状況で8位に入ったのは、本当に才能は秀でてたのでしょうに。

本国公開前から炎上じみた騒ぎも起きていたらしい。そりゃどちらもまだ存命だもの。
でも、「どうしたって、どんなに才能があっても周囲にしばかれる」人間っているから。
誰にでも愛される人がいる傍ら、普通にしているつもりでも周囲をイライラさせる人はいる。
悲しいけど現実。

人はえてしてターゲットをつくる。
叩きやすいものを容赦なく叩く。
叩いているものにも、生活や愛する家族がいることなんて見えてないかのように。

本作が言いたかったことはこういうことかしらと思った。
結構変わった作りだし(ちょっとマネーショートぽい)ふふって笑えるシーンもあるんだけと、後からじわじわ来る。

アカデミー助演女優賞を獲得した、アリソン・ジャネイの何考えてるのかわからない毒親も不気味で凄みあったんだけど、マーゴット・ロビーの「自分からしばかれにいってるような」体当たり演技凄かった。昔の中山美穂を思い出させるヤンキー美人のガワに、強さも弱さも喜びも絶望も投影していた。ちょっとごつかったけど、スケートシーンもかなり演じていたらしいし。
本番前のメイクのシーンなんて、ブラック・スワン思い出してしまってゾワゾワしたよ…

セバスチャン・スタン演じる元夫の「フニャフニャした気色悪い色男」の座りの悪さも引っかかるんだけど、虚言癖がすごい夫の友人もね…。あれを真に受ける大の大人がいるのか! 20世紀でも十分嘘松やろ!って思ったんだけど、それだけ周囲が頭悪いということなのか…

余談ですがTwitterで「セバスチャン・スタンは何を演じても何考えてるかわからないように見える俳優だなと思ってたけど、今回それがどハマりした」というツイートを見つけて膝を打ちました。そうか…ウィンターソルジャーは中が虚無だから…

追記。
ZZトップで滑る女子スケーターなんて、今だとかっこいいじゃん!って思うんだけど。ジョニー・ウィアーだってPOKER FACEで滑ってたやん。
25年遅く生まれていたら、全然評価違ったのかな? スケート協会、どこの国もFUCKだわー(おかんの口癖が移りそう)
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