バルバワ

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのバルバワのレビュー・感想・評価

4.2
主人公のトーニャがずだ袋を担いでトレーニングしているシーンは山頂に登って「うおぉぉぉ!ケリガァァン!」とロッキーばりに打倒する相手の名前を叫べば燃えるのになぁ、とぼんやりしながら鑑賞致しました!

いやぁ、地獄でしたな。この映画には慈しみ合うシーンがまるでありません。主人公の母親ラヴォナは娘のトーニャに対して微笑み掛けたりしないし、トーニャの元夫のジェフは暴力バカ亭主です。そんな二人に歪まされたトーニャ自身どんどん不安定になり周りに当たり散らします。そして三人とも「自分は悪くない」と口を揃えて言い切ります。「自分の弱さを人のせいにするな」…ロッキーだったら三人とも大説教しているところですよ!


作中トーニャには様々な苦難が降りかかります。自業自得なものもあるのですがほとんどは彼女の周りの人々によるものです。
特に終盤、ラヴォナがトーニャに対してあるアクションを起こすのですが…もうね、最悪です。詳しくは言えませんが正真正銘の毒親だと思いました(なんとなく『ブラック・スワン』を彷彿したり)。

前述したように作中起こっていることは悲劇なのですが、ついつい笑ってしまうシーンが多いです。ナンシー・ケリガン襲撃事件周りのバカバカしさは今年一番笑いました!
というかジェフの友達の自称諜報員でテロの専門家のショーンは…最悪で最高というか色々事の発端はあいつなんですよ!しかもエンドロール前に実際のショーンへインタビューをしているシーンがあるのですが、それが本当に衝撃で…マジカヨ(;゜△゜)

あとトーニャの人生は本当に上手くいかなくてですね…ただ愛されたい認められたいという想いだけでスケートを始めるのですが報われない…。作中何度も「私にはスケートしかない!」というセリフを聞く度に胸が苦しくなりました。というか彼女自身スケートを好きだと思えないんですよ、リンクを滑っている時の彼女は何だか苦しそうだし苛立っているようにしか見えない…要は彼女にとってスケートは愛される手段でしかないようにしか思えなくて本当に切なくなりました。

ただ女の子にサインするシーンとトリプルアクセルを決めるシーンだけは報われたと思えました。特にトリプルアクセルのシーンは『ロッキー』でいうと「エイドリアァァァン!」叫ぶシーンのように彼女の人生のベストショットにすら思えます。

最後に倒れているトーニャが「これが真実よ」と立ち上がるシーンは正に「人生より重いパンチはない。それでも、どんなに強く打たれても前に進み続けることだ。」と私達に説教をしてくれたロッキーと重なる屈指の名シーンでした。

あとはマスコミ特有の目移りの早さにムカついたり、所々CGが荒く感じましたが目と口が裂けているように笑うハーレー・クイn…トーニャの鬼気迫る表情は必見ですし、個人的には『ロッキー』シリーズと絡めて観てしまいました💦宇多丸師匠の言うところの家族という名の地獄映画でした!
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