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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのMTMYのレビュー・感想・評価

3.8
実話に基づいた話を映画として観るのは、私にとってはわりとフィフティ・フィフティの駆け引きな感じがあります。
要は、つまらないと思ってしまうか、面白いとおもえたかの二分になることがしばしばあるから。
元となった人の人生が、という意味ではなくて、映画として観たときに、という意味で。
この作品は私にとっては後者で、
とても面白く感じました。
トーニャその人自身の人生がどうだったかというよりも、
あなたはこんな人生をどう思う、笑っちゃうでしょ?
と、ある意味で吐き捨てられたような自嘲を受け止めなければならない作品に思えました。
それが”突き放された面白さ”だったと思います。

そしてさらに面白いのは、

そんな笑っちゃうような人生を私に歩ませたのは、私自身じゃない、私の周りの人間たち、私をエンターテイメントとして持ち上げた人間たち、そこのアナタもよ。

とタバコをふかせながら彼女がぼやく感じです。

彼女を取り上げて 仕立て上げて 吊り上げたのは、彼女自身でなくて、
“そうなること”を好んだ複雑な環境です。

有名人というのも大変なのかもしれないなあ。
彼女が鏡で最後に見せた無理やりの笑顔が忘れられない。
みんなが求める理想のフィギュアスケーターでいなければならないのに、
その理想は嫌悪と表裏一体かもしれないのが怖い。
そんなギリギリのラインで
こんなはずじゃなかったのに!となじられながらも
歴史に残る偉業へと滑走した彼女は
ほんとうにすごい人だったんじゃないかと思います。
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