Raveger

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのRavegerのレビュー・感想・評価

4.4
五輪代表に選ばれながら、ライバル選手への襲撃事件でスキャンダルを起こしたプロスケータートーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)の伝記映画。
事実の正確性ではなく、各々の中にある真実にアプローチしていおり、劇を通して語り部が信用できない。
「ナンシー・ケリガン襲撃事件」に関わる人物のインタビューパートとドラマパートの食い違いから、終始彼らの証言を皮肉る構造になっている。
しかし最後には、彼らの建前や自己弁護の裏にある彼らの尊厳に少しだけ触れることができた気がした。

登場人物アホしかいねぇ笑
奴らのクズ描写がとにかくおかしい。
皆んなクズなんですが、特にショーン(ポール・ウォルター・ハウザー)。
トーニャのボディーガードらしいが、
夫の腐れ仲であるだけだ。
彼は、童貞ホラ吹きニートである。
ただ、彼があんなことを起こした行動原理は、何の望みも無い実人生からの逃避であった。
そこが、おかしさの中に切なさを感じさせる。

また、今作は多彩な表現方法により工夫が凝らされている。
ドキュメンタリータッチなシーンがあれば、実際のビデオを用いる場面、映画的なダイナミックな場面、さらには、第4の壁を破る語りかけなどだ。

最後のオリンピックの前に鏡の前で、なんとか笑顔を浮かべ、自分を保つトーニャを観て不覚にも涙してしまった。

真実なんてどうでもいい。
糞食らえだ。
エンドクレジットでは初めてトーニャがトリプルアクセルを成功させた際の本人映像が使われており、彼女がどんなにクズであっても、あの瞬間は非常に美しいものであった。
アイススケートは彼女の全てだった。
そして、彼女の中に"彼女の真実"があったのだ。


エンターテイメント映画として誰もが楽しめると思う。
それでいて、繕った証言と事実、ジャーナリズムとフィクション、喜劇と悲劇の全てが詰め込まれていて深みを持っている素晴らしい作品だった。