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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのikustatinoのレビュー・感想・評価

4.7
誰もが望んだリングで闘える訳ではない。辻褄合わせの虚構を人に見せつつ、血反吐を吐いてリングに上がる。
どれだけ彼女が嘘にまみれていようと氷上で美しく舞ってみせたトーニャの姿とその努力だけは真実であった筈…けれど予め結末の決まった現実は物語にそんな甘えを許してはくれない。この作品が傑作である事はなんと皮肉か…。


因みに当時を知るスポーツ記者などからは「この作品はトーニャ・ハディングを美化している」と軒並み不評らしい。
これだけブラックユーモアに溢れた作品がそれでもなお物語のメタファーを超えて現実と矛盾しているという事実がまた何とも面白い。
ともあれ物語はそもそも虚構であり、人間の持つ多面性と視点による屈曲をありありと描いた事がこの作品の真価であろう。
マーゴット・ロビー、アリソン・ジャネイをはじめ出演する全ての役者の演技が素晴らしかった。


CMBYNに曲を提供して日本での知名度もうなぎ登りのスフィアン・スティーブンスが劇中の採用はされなかったもののアイ、トーニャに曲を提供しており、これが物語を観終わってから聴くとなんとも叙情的でまるで彼女の傷だらけの魂を慰めているかのようで胸を打ちます。

Sufjan Stevens - Tonya Harding
youtu.be/PUvVjWR3zTQ
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