ま2だ

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのま2だのレビュー・感想・評価

4.4
アイ、トーニャ、観賞。

ナンシー・ケリガン襲撃事件に至るまでのトーニャ・ハーディングの半生を、劇画的な演技力と演出で強度のあるクズ勢ぞろいエンタメに仕立て上げている。映画がしっかり面白いからこそ、負の環境の連鎖というテーマもしっかり伝わってくるというものだ。

現在の当事者たちがインタビュー形式で事件当初を振り返るというスタイル、かつ回想の中での彼らは気軽に第4の壁を越えて観客に目配せをする。テレビの再現ドラマのようなポップな筆致だが、軽薄にならないのは演じる者、演じられる者の濃厚さゆえだ。

似た構図として「ブラック・スワン」を想起するも、爪切りとテーブルナイフに象徴的だが、本作では毒母との関係もライバルとの関係も夫からのDVも、スリルを通り越してコントの域に到達しており、最低×最低の組み合わせにただただ笑うしかない。

一方で、わたしのせいじゃない、わたしはベストを尽くしている、と繰り返すトーニャのスポイルされ続けてきた半生がじっくり描かれている映画でもあり、正しく愛されなかった人間が自らを顧みることの難しさを強く感じさせる。このビターネスと過剰なクズ描写の両輪が本作に豊かな味わいをもたらしている。

アリソン・ジャネイの草笛光子感、コーチの大場久美子感など、なんとなくみんな日本の俳優に見えてくる本作、大竹しのぶ主演でリメイクしても面白いな、と思いながら観ていた。スケート演技中は雑な合成で。そう思うとこのクズ大集合っぷりは「後妻業の女」に通じるところもある。むちゃくちゃ面白かったです。
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