Sachiko

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのSachikoのレビュー・感想・評価

3.7
トーニャ・ハーディングはリアルタイムで全く知らないのですが、映画はとても楽しむことが出来ました。

彼女と夫(大好きなセバスチャン・スタンのまぁくたびれてたこと…泣)の語りから、「ナンシー・ケリガン襲撃事件」をはじめとする彼女の半生を振り返る形でストーリーは進んでいきます。
トリプルアクセルに成功した一瞬=人生のピーク、を引き伸ばす映画の残酷さや、社会がフィギュアスケーターに求める「女性像」から逸脱し、魔女裁判の「魔女」に自らなりきった女性の悲劇がとても良く描かれていました。

劇中のインタビューで「この登場人物、全員バカの物語」と登場人物が『アイ、トーニャ』の物語を表現します。
トーニャはどんな人物なのか?なぜ襲撃事件に関与したのか?といった疑問を抱いて劇場に訪れた観客へ中指突き立てる、開き直り型伝記映画でした。

劇中で観客へ語りかける形の関係者の証言、加えて、その語られる物語の中でも突然、観客に話しかける『デッドプール』さながらのギャグ。
彼女の半生や人となりには、厳格な母親の教育が重く影を落としています。その母親(アリソン・ジャネイ)の名演がまた素晴らしい。怖いのに笑えて仕方ない。

「アメリカには好かれる人と嫌われる人が必要」、「私を虐待していたのは『お前たち』だ」とトーニャは観客に向かって話します。
この映画はトーニャの自伝を描いた作品以上に、アメリカについての映画であり、スキャンダルと大衆についての映画でした。

結果、トーニャは大衆のサンドバッグになってしまった。
「真実」を求め続けるフリをしながら、ただトーニャを殴り続けた大衆に突きつける「これが真実だ!」という中指。
登場人物全員おバカな映画は、私にとってはとても爽快な(開き直った)女性の映画でした。面白かった!
Sachiko

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