どかんとナイス

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのどかんとナイスのレビュー・感想・評価

4.0
実話を基に作られた本作品。私が子供の頃に話題になっていた事件で、「ああ、こんなことあったなぁ」程度の関心しかなく、正直言って事件の全体像を把握していないまま本作品を観ました。

鑑賞後に感じたのは、まさに「事実は小説より奇なり」。登場人物が潔いほどクズ揃いで、自分のことしか考えていない嫌な人たちばかりです。ある意味、映画よりも映画的な人たちによって物語が進み、最後まで突っ走る映画です。

ノンフィクションものを観るといつも思うのですが、何かを繕おうとしたり、目の前の処理しがたい出来事に直面したときの人間の行動は、時に理解不能で狂気を帯びますね。「何でそんなことしちゃうの?」と。信じられないくらい雑だったり、感情にまかせたものだったりします。
私たちは本作品のような映画を観て、これから生きていく中で自分が同じような事態に直面したときに、いかに冷静になり、客観的に見ておかしくない行動を取るか。また、直面した人に手を差し伸べ、諭して良い方向に導いていくかを学び、実践していくべきではないでしょうか。
不幸なことに本作品の登場人物たちに、そうした人間的な情緒や感傷であったり、良い方向に導く人は見受けられなかったように思えます。

但し、私は本作品のような映画は、良い人生を送るための反面教師的な役割を担うものとして評価しますし、クズである登場人物たちが映えるよう=映画構成上のエッセンス、材料として扱い、「こうなったのには理由があるし、こうなっちゃ駄目だよー」「でも、こうなっちゃったら力強く突き進むしかないよ」というメッセージ性を高めている点は、上手くて素晴らしいと思います。
特に主演のマーゴット・ロビーは、そこらへんを分かっていると思います。「スーサイドスクワット」しか観たことないのですが、その演技力は圧巻でした。大一番前のお化粧のシーンは、本作品でそこまでに演じたトーニャ・ハーディングの全てを顔の演技だけで表現していて衝撃でした。震えてしまいました。

マーゴット・ロビー以外の役者さんの演技も素晴らしいのです。そもそも、登場人物がみんなクズで嫌な人たちなので、それが出来る人たちが集まっています。役者陣の演技力だけでも観る価値のある作品です。