CHEBUNBUN

ピーターラビットのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ピーターラビット(2018年製作の映画)
4.0
【群兎の血が騒ぎだす、、、】
昭和63年、イギリス地方都市で幅を利かせる暴力団・野獣組。残忍なマクレガーとの抗争は、彼の死をもって終焉を迎えた(享年八十歳)。歓喜に包まれる野獣組だったが、ロンドンで玩具屋ドンの座を狙うも狡兎良狗、組織に消された男マクレガーJr.が進出してきた。野獣組の組長ピーターラビットは、父親をパイ殺された恨みから、マクレガーJr.襲撃を企てる。そんな中、ピーターラビットの女、ビアをマクレガーJr.が寝取ったことから、本格的な全面戦争が勃発する、、、「ほいのぉ、わしの女になに、手をだしっちょるか!」

さて、ビアトリクス・ポターの名作の実写化を観て来ましたよ!ピーターラビット好き&ウサギフェチである私は鑑賞1ヶ月前、一抹の不安を抱えていた。

なんたって、ピーターたちが可愛くないし、ベンジャミンがアナウサギからホーランドロップに種族変更されている(例えるならば、日本人という設定をブラジル人に置き換えているに等しい)。さらにはあの悪名高い『ANNIE』のウィル・グラック監督作だ。

しかしながら、先日『小悪魔はなぜモテる?!』を観て、見事な『緋文字』の脱構築をウィル・グラック監督が成し遂げており、これはワンチャンあるのでは?と思った。

そして、まさに大傑作だった。ウィル・グラック監督は見事な脱構築を成し遂げていた。

いきなり、冒頭で、「教育映画だと思ったでしょ?でも違うよん☆」とメタギャグから始まる。そして、展開されるのは、血で血を洗うピーター一味とマクレガーの仁義なき戦い。殺気しかありません。目刺し、感電、急所突き、爆破、東映ヤクザ映画真っ青な程の吹っ切れた抗争。この1mmの迷いのなさが本作を楽しい、楽しいポップコーンムービーへと昇華させる。

この手の《”メタ”る》な作品は、漫画であれ、アニメであれ、キャラクターがしっかり描きこまれていたり、本筋と関係がなければ、途端に興醒めしてしまう。

丁度、この前、『魔法少女俺』で1話丸ごと本筋と関係ないゴジラとアニメーターの苦悩を煽った回で視聴者をドン引きさせたように、しっかりギャグと根は関連させる必要がある。

『ピーターラビット』はまさに完璧だ。まず前半のパーティシーンで、各動物の特徴を事細かく描写する。ピーター以外のキャラクターは徹底して原作忠実を目指す。あひるのジマイマやかえるのジェレミーは格別のリアリティを誇る。

そして、ベンジャミンがアナウサギからホーランドロップに変更されたのも納得がいくようになっている。元々、ベンジャミンはピーターの従兄弟として兄貴面をしていたが、マクレガーに捕獲されかけトラウマを抱えたことから、ピーターに頭が上がらなくなった。本作はその後の世界。ベンジャミンの性格をしっかり描写する為、また三姉妹との差別化を図る為ホーランドロップに種族変更した。ホーランドロップは、食いしん坊で愚鈍さが特徴。そのホーランドロップの特徴を見事ベンジャミンの性格に組み込んだ。無論、原作を知らなくともベンジャミンが本作において大切な存在であることは明確に分かる。しかもそれすらメタギャグとして描いている。

あとの詳しい話はブログに回すとして、本作は笑って楽しめる傑作だ。今回私が観た吹き替えはサイコーに楽しかった。まさかのラップシーンまでドープな吹き替えになっており感動すら覚えた。

ただ、一つ忠告するなら、『インサイド・ヘッド』のラストに全く無関係な家族写真が撒かれ、映画ファンを騒然させたあの悪夢がラストにある。これはウサギフェチ以外厳しいと思われる。気をつけよう!
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN