ま2だ

ピーターラビットのま2だのレビュー・感想・評価

ピーターラビット(2018年製作の映画)
3.9
ピーターラビット、観賞。

湖水地方を巡る人間とウサギの縄張り争いを描くヤクザ映画として堂々の実写映画化。動物たちの精緻なCG表現と俳優陣の演技の融合という観点において現時点での到達点と言えるだろう。

同じくイギリスを舞台としたパディントンはピーターラビット同様、擬人化された熊を主役に据えているが、同時に熊の姿を借りて、社会が移民をどう受け入れるかというテーマをシリーズに敷いており、単純に「くまかわいい」という表層との併せ技で、大人の観賞に耐えうるリッチな表現を獲得している。

対してピーターラビットは、都会暮らしの人間が、動物たちのコミュニティに異物として侵入するという構造を取っており、そもそも、パディントンのように我々が生きる社会を照射するようなテーマ性を良くも悪くも備えていない。

2018年に実写映画化を世に問うテーマとして、「自然との共生」ではいささか弱いと踏んだ制作陣が、表層の現代的な拡大解釈を行い、ヤクザばりの熾烈な縄張り争いとしてビルドアップしたのが本作である、と考えるとなるほどと頷ける仕上がりだ。

ピーターを筆頭に劇中におけるウサギたちの応戦や報復のレベルは、トゥーマッチの目盛りに合わせられており、それに翻弄されるヤング・マクレガー=ドーナル・グリーソンの巧みな独り芝居を堪能する、というのが基本の楽しみ方。

神経質でいけすかないエリートに災難を被せて愛すべきコメディ要素を引き出す、という図式は「最後のジェダイ」のハックス将軍に続き、グリーソンの鉄板スタイルのひとつになりつつある。彼のコメディアンとしてのスキルの高さが本作のクオリティを牽引していると言えるだろう。いい俳優だ。

逆にいささか足を引っ張っていると感じたのは、動物たちの動きやセリフにおけるギャグセンス。率直に言って全てがくどいのだが、それ自体が悪いわけではなく、面白いから天丼するのか、天丼するから面白いのかの見極めが全体的に甘い。

公開直後に物議を醸したブラックベリーアレルギーの件についても、アクシデントとして描けばあれほどの批判を浴びることもなかっただろう。顔を思い浮かべて狙う、というさほど面白くもないネタを引っ張るべきではなかったと思う。ウサギ以外の動物たちのキャラクタ設定もしっかり尺を取って二度三度登場させるにはいささか練り込み不足に感じた。(ヘラジカのヘッドライト……は最高)

小動物たちの横溢というクストリッツァ的世界をCGで見事に実写内で描き切った本作。足音フェチとしては画面を駆け巡る心地よい足音にうっとりしっぱなしの至福の上映時間だった。ヴァンパイア・ウィークエンドやプロクレイマーズなどのBGMのセンスも良い。映画そのものとは関係ないが、エンドロール後に流れる謎キャンペーンと本編の温度感の違いに苦笑させられた。