140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ピーターラビットの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ピーターラビット(2018年製作の映画)
3.6
【死の谷間にて】

ホップでキュートなウサギのCGアニメーションをときに音楽でミュージカル調に味付けしながら、確実なる死という匂いを脳に刻み付ける戦争モノである。

人間と動物の領土争いという我々が何万年も繰り返し、安住の地を奪い奪われする歴史の中で、ホップでキュートがゆえに生存競争に勝ち抜いた者もいたであろう。本作はコメディックでありが、領土争いに本気=死すら投入せんとするブラックで本質で一線を越えるシーンを挿入してくる。戦争シーンばりの爆破シーンは楽しかったが、ブラックベリーのシーンはハッキリ言って異常だが、我々も勝利のために枯れ葉剤を撒いた者たちを知っている。

そして本作は寝とられモノでもある。芸術にいそしみ自然の側を愛する女神的な存在への好意が、自然を我が者として死の匂いをつれてくる人間の側に吸い寄せられる焦燥感や喪失感は、それが我々の脳内にある理想の男女関係の育みであるからこその味わいになる。

ファンキーでブラックな悪ノリな動物愛玩映画の域を死のエッセンスが上塗りして、自然と人間の領土争いをマザーアースを寝とられた者たちの焦燥感と映画としてのロジックを外れぬための共存を描いた問題作ではないか?

ニワトリの迎える朝とその鳴き声の視点に感心するばかりだった。