シネマスナイパーF

ザ・ウォールのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

ザ・ウォール(2017年製作の映画)
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出オチとかアイデアだけで引っ張っているもんだとか思うなかれ
姿、正体、そしてひとつの隙も見せない敵に振り回されるひとりの兵士に絞ったお話で、場所はずっと同じ場所から動かず、登場人物もクライマックスまで三人しか登場しない


ずっと続いている事件のうちのひとつにすぎない部分をじっくりと描く系の映画はほぼ確実に面白いと思うんですけど、この作品は、ひとりの兵士とイラクの伝説スナイパーとの会話劇で進められるという設定が秀逸だと思います


敵スナイパーの人物作り込みがすごくいい
描かれ方によって良い意味で嘘なのか本当なのかわからなくなっていますが、暗い過去を持つに至ったらしいという彼が主人公を追い込んでいく様子は、おそらく最初から全て聴いていたのであろうと思うと恐ろしいし、より死神らしさが際立つ

一方で、主人公はスナイパーではなくスポッターという狙撃手助手のような人物に設定されていて、彼にとって欠かせないアイテムにある背景を持たせていることで、戦場に赴いた兵士の持つ傷と、それを抉られる辛さが身に染みる
はじめの脚本の段階ではいなかったという相方も増やして正解で、主人公の動機や心理的ダメージに関わっていきますね

イラク戦争という背景上、テロリストとされる若しくはされてしまっているイラク人の大義はやっぱり付いてくるのですが、今回は敵スナイパーのカリスマ的魅力に繋がっていて素晴らしかった


ドがつくほどシンプルな状況に設定された背景と登場人物で、90分の尺を緊張感たっぷりに味わいつくすことができました


ひとつ感動したというかなんというか、こんなことを言ってはよくないとは思いますが、決して規模が大きくはないこのような作品でもパンフレットが作られ売られていることが嬉しかったというかなんというか、この映画のパンフレット、正直物理的厚さはかなーり薄いのに、とってもいい情報が沢山載っているのですよ
アメリカではパンフレットなんか売ってませんよ
プロダクションノートだとか評論家の方々によるコラムだとか、映画を鑑賞した後に、より深く作品を知りより楽しめる情報が詰まっている冊子が、公開館で手頃な価格で売られている日本で映画を観れることって幸せだなぁとか思うし、結論としてはみんなパンフレット買おうねってことなんですが、特にこういう作品においてはとっても価値のあるものだなぁと思った次第です