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犬ヶ島のkkaのネタバレレビュー・内容・結末

犬ヶ島(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

犬を迫害するという政策、まず第1犬ですとして連れていかれゴミ島に放置されてしまうわんちゃん。酷い。この時点ですごく悲しくて辛かった。

そのわんちゃん、スポッツが亡くなっていた。
しかも小林あたりにとって、両親を亡くし自分も酷い大怪我の中、唯一の肉親のように寄り添ってくれていた護衛犬のスポッツまでもが、あたり少年をおいて逝ってしまった。命からがら飛行機墜落してまで逢いに来たのに。
そう思うと悲しくて涙が止まらなくて、全然乾かず、とうとう埋葬するのか。というところで完全に『七人の侍』のテーマそのものがかかって、一気に目が覚めた。方針というか目指しているものというかが解って面白くなった。
これから目的のために仲間を集めるのかなとか、本当は仲間になりたいのに意地張ってぶっきらぼうに距離とっているのかなとか。
そしてその後も何度も、静かに太鼓の音がずっと鳴っていることとかも『七人の侍』のようで、どう展開するんだろうというハラハラどきどきというにはもっと重い感じ、の心情が同じだった。
私が1度見てはっきり分かったのはこのテーマくらいだったが、意識してもう一度見てみると、いやに明るい日が差しているような背景に登場人物がサイズ感(距離)がバラバラと並ぶ感じなど、きっと黒澤作品の「こことそっくり!」というのがあるくらい意識しているのではないかなととても感じた。

政治家の手で、自分に不都合な内容を「気に入らないなぁ」とだけでねじ伏せること、マスコミ操作、しまいには自殺に見せかけて人まで殺しているのが、リアル。残念ながら実際に起きているようなことだよねと。ちなみにこの毒わさびをちゃんと警戒していた渡辺教授にさすがと思ったのに、ほんのちょびっと口に当たっただけでも駄目だったなんて、そんな殺傷能力を用意していたなんて本当に許せない。

犬たちの表情や毛並み、体の動かし方、目の動きなども本当にリアルでストップモーションアニメでこんなふうに表現できるのか、と驚いた。
そして、渋いハリウッド俳優の方々の声でおしゃべりしているので、とても人間らしい表情にも見えて不思議で面白かった。

予言する犬、とか言ってテレビをよく見ているおばちゃん犬、があのオシャレでかっこいいティルダ・スウィントンだということにあとから調べて驚いた。私が役者さんをまだまだあまり知らないだけで、男性陣も豪華なんだな。


子供たちのほうが、正義に対して誠実に行動できるのかななどと思った。でもこれが留学生の子が1番勇気をだして立ち向かってくれたというのが、日本って日本人ってそういう残念な所あるよなとか思った。
子供たちの眉間や眉毛あたりのシワの入り方や肉の寄り方が、とても怒っていたり強い意志を持っていたりと見えるのが、クレイアニメでそのように表情が感情として伝わるということはとても勉強になった。

野良犬だった僕を拾ってくれた、とあたりが言うのが感慨深い。犬も人間も、同じというか。言葉にするのが難しいけれど。

そしてそのまま子供たちに政治が任されるのが、嬉しいな。

とても独特な世界観で、もっと観てみたいと思った。また、『七人の侍』は私も観て大好きになったが、現状それと『羅生門』の2つしか黒澤作品を見ていないのでもっと観なくては。
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