ごまだんご

犬ヶ島のごまだんごのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.8
ついに犬ヶ島を見ました。ウェス監督の長編作品はあと残り「アンソニーのハッピー・モーテル」だけになりました。この作品は相当古くてレンタルショップとかサブスクにもあまり上がっていない作品なので、見るのはかなり後になると思います。まあ、メジャーなウェス監督作品は全部見れたので、良かったです。
結構ブラックなギャグであったり、ちょっとグロかったり、可愛いんだけど気持ち悪いっていう映像も多くて、かなり独特な雰囲気が出た映画だったと思います。ハマる人はとことんハマる作風です。これに対して、ストーリーは彼の監督の中では1、2を争うくらい分かりやすかったと思います。単純明快です。革命の話であり、世代交代的な話でもあって、分かりやすくて楽しいです。話の中で明確なゴールが定められていて、そのゴールに向かって一直線に話が進んでいくので、小さい子供や初めてウェス監督作品を見る人にもおすすめの作品です。
今作は“ファンタスティック・Mr.Fox”以来のウェス監督の手掛けるストップモーションアニメ作品です。ストップモーションとウェス監督の作品って親和性が高いんですよね。元々、彼の作品は実写の作品も含めてミニチュアの世界が動いているような映像であったり、絵本のような世界観を作るのが上手かったので、この“人形劇”というのは凄くマッチしています。そんな彼の魅力が如何せんなく発揮されたのがこの“犬ヶ島”でした。
キャラクター達のリアリティラインが絶妙です。毛並みやシルエットは本物のようなのに、デザインや動きはどこかアニメっぽいです。犬たちが喧嘩するシーンなんて、ザ・漫画的表現でしかないです。どっちに転ぶという訳ではなく、リアルとアニメの境目にいるようなデザインだったと思います。
日本をテーマにしているとの事で、日本人にしか分からないような小ネタが沢山隠されていました。看板の文字や壁の落書きの言葉、黒沢映画のオマージュなどなど。ネタが多いだけではなく、一画面の情報量も多いので何度も見たくなるような映画です。日本人にしか理解できない部分も多いということで、犬ヶ島という作品は世界中の人々の中で日本人が最も楽しめる作品だといえるのではないでしょうか。
声についてなのですが、主人公アタリを始めとした一部の登場人物の日本語が聞き取りにくかったのが少し気になりました。これ、日本人でない声優を起用していたとの事なので納得です。正直、ほとんど日本語でしか喋らないキャラクターばかりだったので、日本人声優に任せても良かったんじゃないかって思います。僕は今作をイヤホンをして鑑賞したのに関わらず、聞き取れなかったところが結構あったので、この点は残念です。まあ、僕のリスニング力が低すぎるだけかもしれませんが。
奇妙ですが、手堅く作られている映画だったと思います。音響や映画の細部にまで、ウェス監督の日本愛に溢れている作品でした。
ごまだんご

ごまだんご