しの

犬ヶ島のしののレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.8
ストップモーション×ごちゃ混ぜ近未来日本という摩訶不思議な世界観が心地よい。画面はディテールまで設計されており、情報量がとんでもない一方で、物語はやけに単純。日本というより異世界という感じだが、どこか親しみが湧くので没入度が物凄い。とにかく浸れるかどうかの作品。

動きや構図が完璧にコントロールされつつ、生々しい実在感もあるというのは、この監督のストップモーションならではであり、これが本作の世界観を強固なものにしている。和太鼓や相撲、寿司のシーンなど、「日本フェチ」とでも呼ぶべきフェティッシュな日本描写が親近感と異質感を両立させる。

この「両立」は本作のキモだと思う。例えば、本作の世界は日本文化をごった煮にしたヘンテコなものでありながら、完璧に調和した世界のようにも見える。また、一見シュールでチャーミングなビジュアルだが、ゴミ島をはじめ、震災の記憶や独裁、陰謀、排外、不正など、そこにはドロドロした暗い現実が込められている。この「完璧ながら歪」な世界が、前述の「制御されつつ生々しい」ストップモーションで描かれるのである。この一貫性。

そして奇しくも、この「完璧ながら歪」な世界観は、日本という国に非常によくマッチしてしまう。均衡がとれ、秩序立っているようで、やはりどこか歪みがある。そんな世界だからこそ、我々は親和的な感情と風刺的な視線を同居させられ、少年と犬の交流が唯一確かなものとして見えてくるようになるのだ。

このように、舞台設定やその表現方法、監督の作家性、その複合としての世界観そのものがメッセージになっているような作品なので、物語だけ見るとやっぱり考察が足りないと思う。特にラストの展開。自分はあれを完全なるハッピーエンドとは思えなかった。やはりどこか危うさが残り続けるのだが、そういう複雑さに正面から向き合おうという姿勢は感じられない。ビジュアルの豊かさや扱う問題の複雑さに比べ、内容は非常に単純化されてしまっているように感じる。

とはいえ、外の視点から見た「ヘンテコ日本」を逆手に取り、ストップモーションという表現方法、監督の作家性、題材、テーマを見事に融和させ、もはや「世界観で語る」領域まで到達しているのは特筆すべき点だと思う。したがって作品への没入度は随一で、「連れて行かれた」感が物凄かった。