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犬ヶ島のJIZEのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.5
近未来の日本"メガ崎市"を舞台にスナウト病が蔓延した世界で犬だけをゴミ島に隔離するその計画と少年と犬たちの冒険を描いたストップモーションアニメ‼2D吹替で鑑賞。まず今年観たなかで一番"癖"が濃い作品でした。おもに和太鼓のチカラ強い音色や日本舞踊の伝統を連想させるような出で立ちで脱力感たっぷりに"ヘンな日本"が描かれる。全編は奇っ怪な言葉選びや間の取り方など監督の遊び心満載でダークに塗りたくられていた。原題の「Isle of Dogs」は直訳で"犬たちが住む島"。いわゆる犬が増えすぎた問題に対してその是非を問うような人間サイドと犬サイドの動向が明暗を仕分けて対立軸で描かれていたように感じた。作品のメインテーマが"愛犬を取り戻す少年の大冒険"。前半で犬ヶ島の実態が排他的に描かれ後半で人間と対峙する犬たちの正義が浮き彫りとなる。本作を経てウェス・アンダーソンの柔らかくてアートな見方が変わったのも事実で同時に「グランドブタペストホテル」や「ムーンライズキングダム」などグランドホテル形式を取る王道の定型をいかした作品が恋しくもある。作品の裏側では大量の風刺が詰まる作品であるが純粋に犬たちの無軌道な日常に溶け込んで俺は観てました。

→総評(ドッグ病が蔓延したメガ崎市の裏顔)。
想像よりだいぶ斜め横を通過した感覚で観たあとはすこし放心状態となった。ウェス・アンダーソンというチャームな表紙からトンでもなく不穏な作品が誕生した気がする。黒澤映画のスピリットを組み込ませたウェス・アンダーソン流の日本への強いこだわりを随所に感じた。またアタリ君のぎこちなくてかわいい日本語も毎回ツボで真面目さと狂った一面が同居している。吹き出しそうな描写も何ヵ所かありました。犬たちが多数決をとるさいに"エイ"と"アイ"をお約束で毎回使うくだりもコメディとしてパターン化されててとくに最後のほうは面白かった。作品の不満点を挙げれば市町とアタリの関係性が終盤は特に詰めすぎな一幕やここぞという作品の山場がやや散漫化している印象を覚える。人間と犬たちの対立という軸を除いても犬ヶ島というキテレツな作品を象徴するようなドでかいカタルシスがあれば尚良かったように思えました。もっと云えばもう少し語り口に心地よさをプラスしても楽しめた気がする。ただ最初から最後まで加点式で世界観へ入り込める作品でもあった。控え目にグロさを出すあたりも監督の癖が際立つ部分である。このようにあくまで海外の職人監督が手料理した"和のおもてなし"をのら犬でほぼ体現し切ったという痛烈な見方ではディストピアな日本を縦軸にストップモーションの新たな真髄を感じ取れる緩さと不穏さが同時に押し寄せる特別な作品となった。
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