Kumonohate

犬ヶ島のKumonohateのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.6
横暴な権力者の陰謀によって、町から駆逐された全ての犬が隔離されているゴミの島。島には実験場の廃墟もあり、かつてそこで生体実験を施されてボロボロになってしまった犬たちも暮らしている。そんな悲惨な島に、愛犬を探すためにやってきた少年と彼に協力する犬たちの物語。

何といってもストップモーション・アニメが作り出す味わいが素晴らしい。久々にうっとりするような美意識に触れたという気がする。そんなハイ・センスで描き分けられる犬たちの表情や姿形や性格がまた良い。この点だけで評価ポイントは相当高い。

そして随所に登場する日本的なるもの(浮世絵・鮨・鳥居・和楽器・俳句・黒澤・オノヨーコ等々…)が、日本らしさを芯の部分では外していないんだが、ウェス・アンダーソン風に料理されているのが良い。日本でありながらどこか違うという違和感が良い。異なる文化が出会ったときに新しい文化が生まれることの好例という気がする。何より、ここまで日本文化に敬意を表してくれるというのは嬉しいことである。この時点で評価ポイントはマックス。

だが浮かれていてはいけない。

寓話性の高い作品なので、本作には様々なテーマが内包されているが、もっともストレートなのは、ペットという弱者に対する虐待。このテーマを描くにあたって、何故ウェス・アンダーソンは日本を選んだのか。作品全体としては、日本愛の方が日本批判を遥かに上回っていると思う。だが、日本における殺処分や動物実験の横行が、それほど世界に知れ渡っているのかと、恥じ入らずにはいられない。
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