Masato

犬ヶ島のMasatoのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.3

ウェス・アンダーソン監督最新作

「ムーンライズキングダム」、「グランドブダペストホテル」を見たことがあるが、2つとも好きになれず、監督とは相性が合わないと感じた。しかし、本作はアドベンチャーということもあってか、最高に面白かった。

とにかく、日本へのリスペクトが詰まっている。最初に出てくる神社の人は完全に「乱」の仲代達矢。小林市長のモデルは三船敏郎なのが一目瞭然。劇中に七人の侍のテーマソングも出てくる。黒澤明監督へのリスペクトが各所に見られる。そして、ゴミの島は「お台場」か「みなとみらい」のオマージュか。地震や噴火や津波などの災害も取り入れている。主人公の名前が「アタリ」これはゲーム機の名前をそのまま持ってきただけだ。全体的には、現代的な日本というよりかは、80年代くらいまでの日本をごちゃ混ぜに再現したような感じだ。この「ごちゃ混ぜ」が不思議な世界観で面白い。

アニメーションなので、演出が1番の見どころであり、1番の良いところだった。
犬の毛並みの細かさやストップモーションの細かさはさることながら、立体的ではなく、舞台劇のような平面的な映像が終始見られる。その平面的な映像を前後の配置関係をうまく使って遠近感を効果的に出している。また、犬や人間の顔をカメラに向けて、極端にカメラの方に近づけているところが1番に気に入った演出。こっちに話しかけているような感覚を受けて第四の壁を擬似的に破っているような感じだった。あと、犬の会話は大袈裟にすることなく、ボソボソと会話しているのもまた面白い。アスペクト比が現代の2.39:1ではなく、昔ながらの2.35:1。映画館で見ると余分な黒帯があって、独特で良い。チャプター仕立てのところとか、無駄に筋の通そうとしている言語関係の注意書きとか、争う時に「トムとジェリー」のように煙が出てボコスカする表現とか、太鼓のBGMが高揚させているところとか…演出に関して言えばキリがないほど良いところがある。いちいち細かい部分でユニークで見ていて面白い。

ストーリーはアドベンチャーと言いながらも、かなり社会派。町山さんによれば、これは黒澤明監督の「悪い奴ほど良く眠る」をオマージュしており、主人公が飼い犬を探しに行くストーリーと並行して、犬が政策によりゴミダメの島に送られた本当の真実(陰謀)を暴き出すストーリーにもなっている。権力に癒着し、人々を陰謀の渦に落としこむ人間を、それを正義感の強い純粋な高校生たちが暴こうと止めるストーリーは、いろんな事を考えさせられる。今の韓国映画に似たような部分があるから、個人的には面白かった。本筋のストーリーもエキセントリックで面白かった。伏線が多くて普通に楽しい。(少年侍は特に)

字幕版で鑑賞したのだが、声優陣がすごく豪華。ブライアンクランストン、エドワードノートン、ビル・マーレイ、ジェフゴールドブラム、ハーヴェイカイテル、スカヨハ…
なんとオノ・ヨーコや村上虹郎、松田龍平、池田エライザ、山田孝之も出ている(孝之は声たくさん聞いてるのですぐ分かった)。日本語が聞き取りにくい部分は多少あるが、海外映画の日本語としてはかなり聞き取りやすい。主役のこうゆうランキンの日本語は拙いが十分に聞き取れる。


期待と不安があったが、最高の映画だった。必見の一作。
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