てっぺい

犬ヶ島のてっぺいのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.5
【むず痒いほど日本愛三昧】
相撲に歌舞伎、寿司に俳句に太鼓に一本締め笑、エンドロールにはカタカナ表記と、日本人にはむずがゆいほどの日本愛満載。ウェス監督と製作陣に感謝。

『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン監督が、「黒澤明をはじめとする日本の巨匠たちから強いインスピレーションを受けて作った」と語る作品。5匹の犬の登場シーンは『七人の侍』のオマージュ、そして市長の顔は三船敏郎を意識したらしい。(2018/5/23めざましテレビ)
4年間670人のスタッフが製作したストップモーションアニメで、ボイスキャストには、RADWIMPS・野田洋次郎、渡辺謙、夏木マリ、オノ・ヨーコ、スカーレット・ヨハンソン、フランシス・マクドーマンドなど(日本人の並びにオスカー女優って笑)。

今から20年後の日本。メガ崎市ではドッグ病が蔓延し、人間への感染を恐れた小林市長が、すべての犬を“犬ヶ島”に追放すると宣言する。数か月後、犬ヶ島では、怒りと悲しみと空腹を抱えた犬たちがさまよっていた…

何よりもまず、溢れる日本愛。ここまで日本を愛してくれている映画は見たことがないし、ただただ製作陣に感謝したくなる。相撲に歌舞伎、寿司に神社に俳句に太鼓の音色…そしてエンドロールにカタカナ表記までしてあるとは笑。 ある意味、日本人には作れない、外国人が作るからこそ許される、日本の要素てんこ盛り感だったと思う。前述の通り、フランシス・マクドーマンドというオスカー女優の声優の並びに、夏木マリやRADWIMPSがいる!事も含めて、色々シビれました。
そして、ストップモーションアニメだからこそ作り出せる、圧倒的な世界観。揺れる犬の毛並みの精巧さしかり、ゴミ山の緻密さ、目に溜まっていく涙の表現も全て、グッと引き込まれる感覚。全体的に黒と赤の彩色が印象的で、終始流れ続ける太鼓の音色とともに、独特の少し不気味な雰囲気が続く。前述の通り監督は黒澤明からのインスピレーションを受けている訳で、作品の設定こそ20年後の日本らしいけど、昭和初期の雰囲気がふんだん(アナログテレビのシーンすらあったし)で、不気味な世界観の中に、どこか懐かしさすら感じた。今『七人の侍』を見返したら、気づかなかったオマージュを見つけて楽しめる気がする笑
本筋ではないけど、アメリカ映画(ドイツ合作)なのにバリバリの日本語が飛び交い、犬が英語を話している、言語の異空間を体感したような感覚も。そして作品中ではその日本語を話すアタリと、英語を話す犬たちを翻訳機が繋ぐ訳で。誇大解釈かも知れないけど、言語の違いや壁をもろともしない圧倒的な絵力と想像力で、多様なコミュニケーションを表現する、ある意味センセーショナルである意味とてもプリミティブなメッセージを伝えたい映画なのかもとも感じた。
◆少しネタバレ◆
ただこれだけ日本人にとって嬉しい映画だっただけに逆に、中身にもう少し重みやメッセージ性が欲しかった。アタリが市長になってしまうあたりは、ちょっとあまりにも丁寧さに欠ける脚本だし、せっかく人間から犬が捨てられている設定なら、もっと殺処分などの問題に切り込んでくれても良かったと思ってしまった。
まあその辺りは置いといて、とにかく日本愛のなだれ込みを愛でる映画として、ゆるぎない一本な事は間違いないです!黒澤明作品へのオマージュまとめサイトもあったので、ご興味ある方はこちらもどうぞ!http://www.moyacinema.com/entry/isle_of_dogs_akira_kurosawa