ぴのした

犬ヶ島のぴのしたのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.4
ライブとか遊びの予定とか、本当に楽しみにしてたものって、実際にその日が来ると嬉しさよりも先に「ああ終わってしまう…」っていう焦燥感に襲われる。

その映画バージョンを初めて体験しました。

ぼくがウェスアンダーソンという監督を初めて知ったのは大学2年の時。そのころは監督の名前で映画を選ぶことなんかしたこともなく、適当に借りてきたうちの一本に『グランドブタペストホテル』が入っていました。

一枚一枚どこをどう切り取っても絵になる構図や配色。大筋は単純なストーリーでありながら、どこかちょっとビターで大人な雰囲気。

今までストーリーの面白さでしか映画を見ていなかった自分にとって、「映画はもっと面白くて、自由なものなんだ!」ということを突きつけられた映画でした。

それからはウェスアンダーソンの名のつくものを片っ端から借りまくり感動しまくり。全部見た後はキューブリック、タランティーノ、クストリッツァ、ホドロフスキー、ヒッチコック、ジャームッシュなど、いろんな監督の名前で映画を探すことを覚え、どっぷりとその深みにはまりました。

いわばウェスアンダーソンは僕を映画の深みに沈めたきっかけそのもの。

待ちに待った『犬ヶ島』。最高でした。

舞台は近未来の日本。巨大な鳥居⛩が立ち、浮世絵のような山がそびえる「ウニ県メガ崎市」では犬インフルエンザが流行中。島に追放された愛犬を探しに少年アタリは1人、犬ヶ島へ乗り込み、追放された犬たちとともに立ち上がる…!

まずもう世界設定が最高よ。そびえ立つビル群の中に目立つ富士山や五重の塔や巨大鳥居。銭湯に入りながら仕事をする市長。ストップモーションならではの良い意味でのフィギュア感がある室内。

まったく日本ではないのに、日本人が見ても「こんなの日本じゃない」とはならず、むしろファンタジーとして「こんな日本だったらいいな…!」となるのでは?

展開が早くてポンポン話が進むので見やすいんだけど、全場面が美しくて細部が凝りすぎてるので、「うわ何この画面、やば!!オシャレすぎ!細部凝りすぎ!え、もう次?ちょ、待って!」という感じの2時間だった。ほんと10分くらいに感じた。まじで。

2倍の上映時間かけてもいいからもっとじっくり画面を見せてほしい。一枚一枚切り取って額に入れて飾りたい。絵が素晴らしいのはもちろんのこと、瓶のラベルとか張り紙の内容とかまでびっしりと面白いことが書いてあるのでそこまでじっくり見たい。

名優たちが声優をやってるおかげで、アニメでも幼稚にならず渋いテイストなのも推しポイント。チーフとナツメグが夜に語るシーンなんかは普通にハリウッドの恋愛映画みたいな"大人感"があった。

とにもかくにも最高だった。多くの人に見てほしいし、映画ってこんな面白いのかと思ってくれたら最高。ありがとうウェスアンダーソン。

黒澤のオマージュも多いみたいで、次はいよいよ黒澤映画を見てみようかな。映画の沼は果てしなく深い。