Jin

犬ヶ島のJinのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.9
”従順なオスはつまらないものよ”


犬インフルエンザの流行を防ぐため、犬を犬ヶ島に隔離。愛犬を救いにやってきた市長の養子が、犬ヶ島の犬たちと共に政府の陰謀を暴いていく物語。近未来の日本をストップモーションのアニメで描いた新しい映画。

予想よりはるかに面白かった。
独特の絵とセリフがとにかくシュールで笑える。
それを異常に早いテンポで見せられるから全く飽きない。

ウェスアンダーソンっぽい作り込まれた世界設定だった。
とにかく、「海外から見た日本」って感じ。
喋り方や生活様式、独自の文化や歴史がいかに異質に見えるか。
絶対に英語を話さない日本人たち。
英語版だと日本語のセリフには字幕がつかないそうだから、もっと「理解不能で不思議」に映るのだと思う。
要素は切り取ったらきりがないけど、とにかく細かい。

豪華な声優陣も無駄にしてなかった。

政治的な風刺も強くて笑える。
ファシスト気味の政治家だが、それも選挙で選ばれている。
人々はそれに洗脳され、言い出せない日本人。官僚主義。
民主主義の「とりあえず反対意見も聞く感じ」や「とりあえず多数決してみる感じ」。

黒澤映画のオマージュも入ってて、日本リスペクトしつつ皮肉もいれる面白い作り。


ただ、アメリカ映画っぽいところもしばしば。
白人救世主だし、最後は愛が解決するし。

そして隠れた大きなテーマとして白人黒人の問題が描かれてると思う。
黒い犬を白く洗うところとか、白人声優陣を揃えたとことか。

アメリカ国内と日本をシュールに描いて、そこにある民主主義やポピュリズムに触れつつも、独自の世界設定で高速に楽しませる感じ。
何度もゆっくりみるといろんな要素が見えてきてもっと楽しめそう。
Jin

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