茶一郎

犬ヶ島の茶一郎のレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.4
 (恥を承知の表現で)「世界最高のオサレ監督」ウェス・アンダーソンによる、「ニホン」を舞台にしたストップモーション・アニメーション『犬ヶ島』。
 ドッグ病という病気が蔓延し犬たちが「犬ヶ島」に追放された20年後の日本・ウニ県メガ崎市を舞台に、かつて愛犬を追放されたアタリ少年による愛犬探しの旅、嫌犬派の小林市長との闘いが始まります。
 
 テキサス出身である監督自身の過去を「イギリス風」に染め上げた『天才マックスの世界』、そして『ライフ・アクアティック』ではB級カルト映画『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』への憧れを、何より監督前作『グランドブタペスト・ホテル』においてはド直球なヨーロッパ憧れを映画に刻んだウェス・アンダーソン監督。この監督の「憧れ」と「映画」との距離感のキュートさこそがウェス・アンダーソン作品の美点だとすると、本作『犬ヶ島』は監督のフィルモグラフィ上で最もキュートで最高のウェス・アンダーソン作品なのではないでしょうか。
 本作においてウェス・アンダーソン監督は、黒澤明、本多猪四郎、宮崎駿、鈴木清順といった「ニホン映画」と自分との距離感を映画に刻み込み、『グランドブタペスト・ホテル』で開花した非常に分かりやすいストーリーテリングで、この『犬ヶ島』を芸術的でありながら誰でも楽しむ事ができる娯楽作品に仕上げました。

 ウェス・アンダーソン監督の「ニホン映画」への憧れは最高にキュート。仲代達矢に始まり、もう映画に出すことは不可能である故・三船敏郎氏、志村喬氏をストップモーション・アニメーションによって復活させる荒技には舌を巻きます。
 また汚職にまみれたメガ崎市、その最高権力を倒そうとする物語構造は黒澤明監督作『悪い奴ほどよく眠る』そのもの。(その『悪い奴ほどよく眠る』で正義の復讐者を演じた三船敏郎がこの『犬ヶ島』では何と悪役!)虐げられた犬達が『七人の侍』のテーマで立ち上がるという、ギャグとも思えてしまうウェス・アンダーソン監督の憧れの強さには頭が下がりました。

 これほどまでにディティールが最高で、日本人より遥かに数段上の「ニホン憧れ」、「クールジャパン」が詰まった作品などこの世に存在しません。そして最後にはやはりウェス・アンダーソン監督作品らしく「年上(本作では犬)」と「少年-青年」の友情を美しく描く、非常に感動的な作品と思いきや、ドンドコドンドコと太鼓の音でウェットになり過ぎずにブラックに颯爽と駆け抜ける。何とも痛快で快感度数の高い作品!『犬ヶ島』!