ひろ

犬ヶ島のひろのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.2
ウェス・アンダーソン監督、脚本、アメリカ/ドイツ製作による2018年のストップモーション・アニメーション映画

「ファンタスティック Mr.FOX」以来のウェス・アンダーソン監督によるストップモーション・アニメーション作品。前作はストップモーションの最高傑作だと思うけど、今回もシュールな世界観が病みつきになりそうな作品

今回は架空の日本が舞台。ウニ県のメガ崎市では犬インフルエンザなどの疫病が蔓延し、原因である犬をゴミの島へ隔離する。市長の養子小林アタリ少年は飼い犬スポッツを探すためにゴミの島へ向かい、島の犬達とスポッツを探す冒険に出るといったお話

670人のスタッフで4年以上の歳月をかけて製作されたパペットによるストップモーション・アニメーション。犬達の毛並みなど、かなり表現するのに苦労したであろう場面ばかりだ。天才ウェス・アンダーソンの世界観はいつも独特だが、孤高の天才はいつも遥か先を歩いている。今回は盟友ロマン・コッポラとジェイソン・シュワルツマンというコアな2人も共同原案なので期待値は高くなる

オープニングの子供達による和太鼓の演奏から不思議な世界観に引き込まれる。日本人は日本語を話すが犬は英語だったり、ウェス・ワールドへトリップさせられる。犬のケンカのシーンはお馴染みの漫画みたいな表現で笑えるし、日本文化をリスペクトするウェスだけど、ちょっと誤解がある表現も笑える。日本シーンの担当は日本人だからわざとかもしれないけど、一本締めのシーンは笑った。ビジュアルも独特で好き嫌いは分かれるかもしれない。でも個人的にこういう雰囲気大好き

監督が公言している日本文化への愛情が随所に散りばめられている。黒澤明監督と宮崎駿監督からの影響は大きいと言っていて、作品にもオマージュが散りばめられている。三船敏郎や仲代達矢といった黒澤作品常連俳優もオマージュされている。この作品の上っ面だけ見て評価しないで、こういった日本への愛情をちゃんと理解して見ると、また違った印象になるはずだ

字幕版で観てよかった。元々日本人役は日本語なので問題ないし、英語パートの犬とかの声優がハリウッド大作並みの豪華キャスト。ウェス・アンダーソン監督だから格安のギャラでも出演したい俳優ばかりなのだ。リーヴ・シュレイバー、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、ティルダ・スウィントン、グレタ・ガーウィグ、フランシス・マグドーマンドといった凄すぎるキャスト。日本語声優も渡辺謙、野田洋次郎、夏木マリ、オノ・ヨーコなど豪華だ

CGが全盛期であるこの時代に、ストップモーション・アニメーションという時間がかかる非効率な作品を製作するウェス・アンダーソン。天才と呼ばれる監督の映画哲学が詰まっているだけに、第68回ベルリン国際映画祭で監督賞である銀熊賞を受賞したのは納得だ。古典的なストップモーションを用いて新しい世界を築き上げていくウェス・アンダーソン監督。それは実写映画でも同様で、この監督の新作はこれからもただただ待ち遠しい