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犬ヶ島のsomaddesignのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
5.0
ウェス・アンダーソン版黒澤明世界
またしても父を越える息子の話でもあるような。


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いまから20年後の日本。ウニ県メガ崎市で犬インフルエンザが大流行し、犬たちはゴミ処理場の島「犬ヶ島」に隔離されることに。小林市長の養子で12歳の少年・アタリは隔離された愛犬スポッツを捜し出すため、たった1人で小型飛行機を盗んで犬ヶ島へと向かう。やがて犬を取り巻く大人たちの陰謀が明らかになっていき……。

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大好きなウェス・アンダーソン最新作とあって、今年イチ公開を楽しみにしていた。
運良く仕事が一区切りしてくれて良かった!🤣


最高傑作「グランドブタペスト・ホテル」以来の最新作とあって期待と不安が半分ずつ。
しかも日本が舞台とあって期待も不安も倍増しちゃう。


「ファンタスティックMr.FOX」以来のストップモーションアニメで、相変わらずキャスト陣が無闇に超豪華。常連のビル・マーレイ、エドワート・ノートン、ジェフ・ゴールドブラム、スカーレット・ヨハンソン……だけでも既に豪華なのに、アカデミー賞女優フランシス・マクドーマンド、 リーヴ・シュレイバー、ブライアン・パクストン、ハーヴェイ・カイテル等々……フィルモグラフィを重ねるたびにキャストが豪華になっていく。映画界の「We are the World」みたいになってきた!

黒澤明映画の影響色濃くて、「どですかでん」のゴミの山を舞台に放逐された犬たちの冒険を見てるよう。BGMは「七人の侍」オマージュかしら。他にも「天国と地獄」「蜘蛛巣城」「悪い奴ほどよく眠る」「野良犬」「生きる」……といったクロサワ映画を通じて、日本映画や日本文化への深い敬愛を詰め込んだ傑作。

相変わらずの飛び出す絵本タッチだったり、シンメトリーを多用した緻密で完璧主義な映像美はそのままに、独創的っていうかトンチキな世界観も安定のハイクオリティ。

アンダーソン監督作は(グランドブタペスト・ホテルを除いて)いつも「無理解な父親」「父親像」についての話になっていて、自分が何者で・何をしたいか・どう在りたいかを模索する物語だと思う。
今作ではアタリ少年と犬たちの冒険を通じて、父親自身のアイデンティティにまで踏み込んだ意欲作だったように感じた。向き合えない理由を子供を鏡として自分自身を見つめ直すような。


とにかく作り込みが尋常じゃなく凝りまくってて、リアル・非リアルを越えて監督の頭の中を精巧に人形世界に落とし込んだよう。特に日本語フォントがちゃんと凝ってデザインし直されてて、いちいち可愛い!ラーメン屋の看板から、字幕テロップまで多様なフォントをキッチリ使い分け、場合によってはタイポからデザインしてあって物凄い懲りよう。母国語でもないのに、どうしてこんなに凝れるのか🤩

そうなると当然英語⇆日本語の翻訳/意訳も完璧で、口数が多いのにセリフの意図する面白さをそれぞれの言葉で訳し直してる労力たるや想像するだにメンドくさい。

ただでさえ面倒臭いストップモーションアニメなのに、物語上は完全に無意味なシーンがあったり、中盤で物語が急激にダレて「この映画長え」と感じるのも相変わらず。なのに見終わるとスグまたあの世界観に浸っていたくなる中毒性はなんなんだろうか?🤫

長い制作期間の間に政権が変わってリアルに小林市長みたいな大統領が生まれたり、難民問題やEU離脱etc……架空の近未来日本を描いたハズが、作ってるウチに世界の方がお話に追いついちゃったの面白い。や、面白がってばかりじゃダメなんだろうけど。



(余談)
六本木に見に行ったらたまたまロビーで「犬ヶ島展」をやっていた。劇中使われた人形やセットを見ることができてラッキー!🌟
何気ない落書きや、クラスの隅っこ学級新聞まで作り込みが凄まじく、見出しに「市長賄賂疑惑を否定」って書いてあったり、「瞑想の基本」なんて本が積んであったり……。絶対見えないとこまで手を抜かない異様な執着が素敵&病的でちょっと怖い!


42本目