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犬ヶ島のyumeayuのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.0
どくわさび

物語の舞台は、いまから20年後の日本。
そこに広がるのは昭和レトロで時代錯誤な世界…。

近未来と呼ぶにはすごく違和感のある日本なんですが、ストップモーション・アニメだからなのでしょうか、それともウェス・アンダーソン監督の作家性の賜物なのでしょうか、洋画にありがちな“勘違いジャパン”を見た時のような、あの嫌な感じはまったくなかったですね。
むしろ、ウェス・アンダーソン監督の日本への愛情がとても感じられましたし、こんな風に日本を見てくれていたんだと嬉しくなりました。
ありがとう!ウェス・アンダーソン!

そして今作は、ウェス・アンダーソン監督自身が以前から公言しているように、黒澤明監督をはじめとする日本映画界の巨匠達からの影響が色濃く反映されています。
恥ずかしながら、黒澤映画は数本しか見たことがありませんが、それでもアタリ少年と犬たちの関係は「七人の侍」そのものだと見当がついたし(BGMがそのまま引用されていた)、廃棄部であふれたゴミ山は「どですかでん」の舞台設定のそのままでした。
黒澤映画に詳しい人なら、もっといろいろなオマージュに気づくのではないでしょうか。

実際、僕が劇場で見た回は意外と年配の方が多く、なんだかウェス・アンダーソン作品ぽくない雰囲気だったのですが、前述したような場面になるとクスクスと笑いが起きたりして、「おぉ、さすが黒澤明リアルタイム世代」などと勝手に感心しちゃいました。

それから、これは日本語が理解できる日本人であるからこその嬉しい悲鳴なんですが、画面から伝わる情報量がハンパないこと。とにかく情報過多。
他の国の方ならスルーしてしまうような場面でも、日本語があちらこちらに書かれていて、なんだか目がいってしまうし、セリフになっていないようなガヤの声も何を言っているのか聞き耳を立ててしまう。その多くは意味ありげで意味のないものばかりなのかもしれないけど、やっぱり気になっちゃうんですよね。

あと無駄に細かい描写の数々。相撲の取り組みの様子や、寿司を握る様子など、物語に全然関係ない場面なのにあの力の入れようときたら…。あのシーンだけに何時間かけているのだろうか…。
ウェス・アンダーソン監督の魅力といえば、まるで絵本のようなカラフルでシンメトリックな画作りですが、僕は彼の変態性や毒っ気の部分も好き。
まさにあの寿司のシーンは彼の変態性が全開になっているところだと思う。

だって、蟹の殻まで海苔に巻いちゃうんですよ!
いくらなんでも、さすがに殻までは食べないよ!
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