ま2だ

犬ヶ島のま2だのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.0
犬ヶ島、観賞(字幕版)。

決して難解ではないが(プロットはむしろシンプルだ)面白さを言語化しづらい作品。企まれ、整理された混沌、という印象を受けた。

英語、日本語、イヌ語とそれぞれの字幕が氾濫する画面からは、特に会話のスピードや音量のコントロールで、このストップモーションアニメの中に観客を放り出そうとする意図を感じる。現実にその場の全ての会話や情報が知覚できることなんてないし、あらすじや会話のひとつやふたつわからなくても映画全体の美しさは損なわない、というテーゼを感じさせる。その意味で吹き替え版と字幕版では全く別種の映画体験ではないだろうか。

それでいて構図は奥行きを無視したり、シンメトリーを強く意識した没入感よりは俯瞰の美を追求したものが多く、複雑な階層を持つ作品だと思った。

シンプルなプロットについて語るべきことは、イヌや人が意外と頻繁に美しい涙を流す話だな、という以上はないのだけれど、ウェス・アンダーソンが胸いっぱいに吸い込んだ日本文化と犬への愛を、偏執的なこだわりで再現した世界観はただただすばらしい。リアルではないのだけれどフェイクでもない日本がスクリーン内に存在していた。フランシス・マクドーマンドとグレタ・ガーウィグの役どころにびっくり。
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