ひろゆき

犬ヶ島のひろゆきのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.4
銀幕短評 (#118)

「犬ヶ島」
2018年、アメリカ、ドイツ。 1時間45分、公開中。

総合評価 67点。

小さい人形モデルをストップモーション(コマ撮り)で作られた長編映画。「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年、かなりおもしろかったが 紹介圏外)のウェス・アンダーソン監督作品。

いまから20年後の日本の とある都市が舞台。登場する “ヒト”たちは日本語を、“イヌ”たちは英語を それぞれ話す(ので 直接のコミュニケーションがうまく取れない)という おもしろい設定。コマ撮りの技術が高く、ありがちな カタカタ感がない。

ストーリーはきわめて簡潔で分かりやすい。ので、そこには ほとんど意味はない。意味をもつのは、すべてのディテール(細部)である。

日本語と英語の併記や使い分け(日本語→英語の通訳者が頻出する)、細部までの意匠の作り込み、日本文化の紋切り型の紹介表現などが とりわけ興味深い。この映画は、作った国のアメリカ人やドイツ人が観るよりも、日本人が観るのが 細かなニュアンスや製作者の意図が汲み取れて いちばん味わいがあるだろう。

思うに、本作品のテーマは “個のアイデンティティ” である。ヒトは人で、イヌは犬で、その個体個体のアイデンティティをもつ。それらが反目することもあれば、同調しあうことも 当然にあるわけで。

それでは、わたしのアイデンティティは何か?と考えずにはいられない。まわりのひとは わたしを見て、“He is walking Integrity! ” 「 “誠実” が服を着て歩いている!」とよくいう(のが聴こえる、という気がする)。それもわたしの多様性の一面を捉えたものだといえるだろう。アイデンティティはひとつ、とはかぎらないぞ。
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