10円様

犬ヶ島の10円様のレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.9
「犬が人間の最良の友となったのはいつからか?」
「それは紀元前。人間が狩猟を始めた時からだ」

ディナーラッシュという映画のワンシーンの会話
です。納得…人間は犬がいなくては生きていけない。そのDNAが何世紀も過ぎた現在も我々の体にあるのでしょう。犬ってホントに素敵☺️

【不完全なモノが完璧となる監督のセンス】

ストップモーションアニメといえばスタジオライカが有名ですね。「KUBO」や「ボックストロール」を観た時の衝撃は忘れません。緻密すぎる作業が生んだ人形の動きは流動的であり淀みなく、加えてカメラが動くこと!もうCGアニメそのものでした。しかし極めたが故にあの独特のカクカクした動きは皆無です。それがストップモーションアニメの醍醐味だと思うのですが…

さて、「犬ヶ島」はというとかなりカクカクします。Eテレとかでやっているクレイアニメばりです。(さすがにそれは失礼か…)キャラクターの表情も大きな変化はなく、死んだら目が✖️になるとか、舌を出すとか、垂直に倒れるとか、かなり漫画チックなんですね。またカメラは横移動しかしなくて、空間的な奥行きはあまりありません。動く絵本と言えば分かるでしょうか。これは「ファンタスティックMr.FOX」や監督の過去作品からスタイルの継承は容易に察知できる事で、「ムーンライズキングダム」「ザ.ロイヤルテネンバウムズ」を鑑賞いただくと分かります。

そして最も不完全と言っていいのが日本の描き方ですね。科学技術の不整合さや時代錯誤な文化。犬が英語しか話さない。この部分はかなり酷評をもらったようですが、「今時それを批判するのか…」というのが正直なところです。「グランドブタペストホテル」でも印象的でしたが、閉塞された空間においての独自の異質感を作り出す監督のセンスは本当に素晴らしいと思いました。

この計算された不完全さが最大限に発揮できる場所って、ストップモーションアニメなんだと思います。今後も監督には3作に1作はこんな摩訶不思議なアニメを作ってもらいたいものです。

そういえば原題の「Isle of Dog」(アイルオブドッグ)は直訳で犬の島ですが、これを流暢に言うと「I love dog」になるそうです。良いタイトルですね。犬ヶ島って邦題もとてもしっくりきましたが、これはアンダーソンが予め決めていたのかな?
10円様

10円様