過度に作り込まれた作風がちょっと苦手だったウェス・アンダーソン監督による新作。今回は初のストップモーション・アニメで、舞台は近未来の日本（らしい）。登場するキャラクターの大半が犬で、これまでの作品と比べて、その作り込み具合がダントツで強化されていて、ここまでやられると降参するしかない。冒頭の和太鼓シーンから、もう目が釘付けになった。
同じストップモーション・アニメのスタジオ・ライカや、CGアニメのピクサーが、実物超えの美麗アニメを目指して、下手をするとアニメが持つ独自の味わいが薄れてしまっているのではないかと感じる事があるのだが、本作は全く逆で、ストップモーション・アニメの味わいを自覚的に打ち出している。特徴的なのは横、正面、上の３方向からの固定視点で大半のシーンを撮影している事。所謂3Dアニメとは逆で、紙芝居や絵本のテイストに近い（NHKでやってたプリンプリン物語を思い出したり）。このシンプルな構図から、日本の政治家やペット虐待を思わせる社会問題を映し出していく手法が、なかなか強烈なインパクト。
なお、アメリカ製作のオリジナル版でも日本語を話す登場人物が多く、吹き替え版で追加されたキャストを含め、ミュージシャン等のかなり個性的な面子が声優を務めている。
演出がキョーレツ過ぎてストーリーが頭に入って来ないのはウェス・アンダーソン作品ではありがちな現象。物語を追い過ぎず、ちょっと体調が悪い時に見る変な夢みたいな感覚で臨むと良いかも。
