ルッコラ

犬ヶ島のルッコラのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
5.0
2022/12/14 再見

改めてみたらめっっっっちゃくちゃいいなーーー
と思ったらしっかり☆5つけていて変わらないなーと。

いいと思うポイントは変わらないものの自分の中で解像度がしっかり上がっている感じがとてもよかった。

七人の侍も先日観たばかりだし、オマージュがしっかりわかってよかった。

アタリ少年のひたむきな犬への愛情、そしてアタリ少年を取り巻く犬と人間の愛情がみていて心にささる。
チーフが徐々に心を開いて、絆に変わっていく過程がたまらない。

ウェスアンダーソンはこのくらいの時期が一番バランスいいのかな。
フレンチディスパッチもいいけど、改めて見たらこっちのほうが好きかも。




2019/03/22 02:15
5.0


自分の映画ベスト10を選べと言われたら間違いなく入る傑作


映画でも音楽でも人は感情が動かされたときそれが感動となるが、その動きに質があって
たとえ涙がこぼれても自分の中でその重さが違うことがある。

例えば、ジョン・ラセターの映画が好例。
非常にバランスがよく映画としてエンターテイメントとして100点に近い作品をバンバン作る。
起承転結、緩急が非常にうまく誰が見ても間違いなく平均以上のスコアをたたき出す。
いわゆる「泣ける映画」
興行という意味でも作品の質としてもこれは正解だと思うし、ここに達しない映画も非常に多い。

ただ個人的にはこういう映画はとても疲れるのであまり好きではない。
ストーリーのテンポも速くコントラストも強く、例えるなら感情を鷲掴みにされブンブン振り回されているように感じてしまうし、本当にそれは自分の感動なのか不安になる。


一方で。メリーポピンズ、眠れる森の美女等々、ストーリーではなく、ただただその映像やシーンが美しいというだけでこぼれる涙もあり、おしゃれキャットのようにただただ仕草の愛らしさに揺り動かされる感動もある。
また穏やかな感動だけでなくセッションのようにエネルギーの塊をひたすらぶつけるような感動も近しいものがある。
美術館などほとんど足を運ばないのだが、今までに絵画を目の前にして、なぜか涙がこぼれるようなことが何度かあった。
そこに物語や背景や理由がなくてもすっと心にしみ込むような瞬間。それに近しい感動。
そういったものこそ今の自分には心地いい。



前置きが長くなったが「犬ヶ島」はまさにそれ。
ストーリーもメッセージも教訓もあるし心打たれるセリフやシーンもおおい。
ただどれも押しつけがましくなくさらっと進行していく。
そこに心留められる人もいるし流す人もいる。

そしてそこに対比するように、映像はひたすらに情報量が多く緻密に作られている。
ただ混沌としているようで画面はとても美しく整理されていてどこで一時停止しても完全な絵になる。
更にウェスアンダーソンの映画らしいトリップするようなBGM。
ある種の宗教音楽を思わせるテーマの繰り返しは映像との一体感をより強め観客を没入させていく。

自分はこの映画の中に共感や教訓を得ることは一切ない。
「寓話」ではなく現在の「童話」でありそこに単に物語が存在するだけ。
何かが起こり終わるというそれだけ。

本当に素晴らしい作品だった。
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