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犬ヶ島のsosukearakiのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.9
ウェス・アンダーソンの日本愛に溢れた映画。
むしろ日本愛を表現するためだけの映画だったかもしれない。
だってこの話の舞台は、全く日本である必要がないからだ。
そして、その日本愛は、日本人の性格、国民性にまで至っている気がする。

物語が始まる前に、字幕に関する注意書きをすることから、
この作品にとって言語は非常に重要なものだということがわかる。
頑に日本語を喋る主人公の言葉を、英語を話す犬たちはほとんど理解しない。
言語を超えた愛情・理解という犬と人間の交流をシンプルに描いていることはもちろん、
日本語がかなり独特な文化であり、それを頑に使用する日本人の鎖国性も示していると思う。
そして、犬たちを救うために立ち上がり、一番頑張るのが結局留学生の子であるという事実。
当事者であるにも関わらず、全く声を上げずに傍観している日本人の国民性を映し出す。
こんなふうに、相撲に俳句、浮世絵といったわかりやすい日本文化だけでなく、
作中の至る所で日本の奥深い性格のようなものまで感じることが出来る。
海外の人が、ここまで日本のことを正しく描いた映画はこれまであっただろうか?
ただただすごいと思う。

この溢れ出るウェス・アンダーソン感はどこからくるんだろうなあ?
エドワード・ノートンが少し喋るだけで「あ、これはウェスの映画だ」と感じるもの。
左右対称な映像はもちろんのこと、脚本にもしっかり特徴が出ていて。
今後もずっと、ウェスの映画は楽しみになるんだろうなあ。
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