Inagaquilala

エクストーション 家族の値段のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.8
妙な副題も付いていないし、タイトルも原題(「EXTORTION」)そのまま、こういう作品は好感が持てる。「エクストーション」とは、「強奪、強要、ゆすり」という意味だが、その作品はまさにそこがポイント。内容紹介やヴィジュアルなどを参考にすると、海でのサバイバルものかと思われるが、家族3人が漂流するのはほんの序章。そのあとが凄まじい物語になる。

バカンスでカリブ海の国(はっきりとは描写されてはいないが、ジャマイカあたりか)を訪れた医師の一家。夫と妻と幼い息子。夫は家を出るときに老いた父親から、「ホテルではコンシェルジュに金を渡せばいい部屋がもらえる」、カリブでは金次第のようなことを言われる。これが後々の事件の前触れ的セリフだ。

夫はジェットスキーに乗りたいという息子の要望に応えるため、ビーチの係員に尋ねるが、すべて出払っていて、いまは難しいと。係員に金を渡して、ホテルの外にあるレンタルのボートを教えてもらう。3時間の予定で一家3人はボートで海に出るが、妻の陸地が見えなくなったのでそろそろ帰らなくてはという心配をよそに、かすかに見えてきた小島を「宝島」だという息子の言葉に応えるべく、島をめざす。

上陸して、島を一周して戻って来た夫と息子、その間、妻は木陰で読書していた。さあ、帰ろうとボートのエンジンをかけるが、これがかからない。あたりを通る船もなく、一家は島で野宿することに。3日目、喉も渇き、食料もない。このままでは危険だということで、エンジンのかからないボートに乗って、海に漕ぎ出すが、さらに沖の島に流されてしまう。

このあたりまでくると、サバイバルものの常として、どんなふうにこの一家は生還するのだろうと気になり始めるが、まだ上映時間はたっぷりある、このまま「オデッセイ」のようなサバイバル生活が始まるのかと思いきや、偶然通りかかった漁船に救けられる。しかし、この船に乗っていた漁師から助ける代わりに、100万ドル出せと脅される。実は、ここからが、この作品の本当の物語が始まるのだ。

このあとの主人公である夫の物語は凄まじい。次々と無理難題、不条理な状況に追い詰められていく。その畳み掛けはこれでもかというほどに濃厚だ。妻と息子を救けるために奔走する主人公の姿はもう鬼神の如きだ。ただ、残念なのは、最も救出における肝心な部分で、偶然に頼ってしまうところだ。それはあまりにも都合が良すぎるだろうという感じがしてならない。

とはいえ、この作品も「未体験ゾーンの映画たち2017」での観賞だが、出来は悪くない。伏線なども適度に散りばめられており、単なるサバイバルもので終わっていないところが、最後まで巧みに興味をつなぐ。いったいどんな結末になるのだろうという期待は、とりあえずは満たされたように思う。
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