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種をまく人のkyokoのレビュー・感想・評価

種をまく人(2016年製作の映画)
3.8
一家に起きたある悲劇を背景にして、喪失・贖罪・再生を描いた作品。
震災がもたらした影や障害者に対する差別、さりげなく難民問題まで入っていたりする。
この手の日本映画は盛り込み過ぎて失敗するパターンが多いけど、説明過多にしない脚本で鼻白む都合のよさもなく、展開が破綻することもなかった(導入部分はちょっと露骨だなと思ったけども)。光雄のいかにもゴッホ然とした風貌と行動に、後半は通報されんじゃないかとちょっとヒヤヒヤしたのは私だけか。

とにかく辛い。
はじめは母親に感情移入するだろうと思っていたのだけれど、もはや感情のコントロールができなくなっている母親を前に、私の心は完全に娘の知恵になっていた。どんどん自分が小さな子どもになっていく気分だった。

知恵を追い詰めるのは母親だけではない。
品のない母方の祖母は問題外として、もうひとりの祖母も、一見優しげな担任も。
ミャンマーの子と知恵、ひまわりで一挙両得!みたいなやり方が気に入らない。
こういう偽善的な教師の提案って大体はうやむやで終わるのよね。

震災からの復興はまだまだ時間がかかる。
知恵の心の再生も同じだろうと思う。
目の前に広がった風景と知恵の強い目に救いを持たせたラストは、少しだけもっさりしてしまったけど悪くなかった。
モヤモヤが残るとしたら、母親が自分の罪を理解しているかどうかが最後まで分からなかったことかな。


中島亜梨沙と中村ゆりって、似てない?
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