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ネルーダ 大いなる愛の逃亡者のKUBOのレビュー・感想・評価

3.5
10月13本目の試写会は「ネルーダ 大いなる愛の逃亡者」。

「チリ」のことなんて全然知らないので、本作のタイトルにもなっている「パブロ・ネルーダ」がノーベル文学賞を獲った詩人ということも、チリのレジスタンスを率いた共産党の英雄ということも知りませんでした。

そんなネルーダさんは、実は女好きで享楽主義者。前半は半裸の女性たちが集う怪しげな集会でご満悦の様子も描かれ、ハゲで腹の出たおっさんがなぜモテモテなのかわからない。主人公「ネルーダ」の魅力が伝わってこないな〜、と思って見始める。

最初は耳元で囁き続けるようなモノローグが延々と続いて鬱陶しい。このモノローグはネルーダを追う警官ペルショノーによるもの。始めのうちはなぜ警官のモノローグで物語が進むのか違和感があるのだが、物語が進むうちにペルショノーがもう1人の主人公となってゆく。

監督が「ジャッキー/ファースト・レディ 最後の使命」のパブロ・ララインだけに、映像も音楽も重厚で素晴らしい。だが「ジャッキー」で眠かった人には、これも眠いかも。

「物語は主人公を中心に展開するの」
「追うものと追われるもの」
「主役と脇役」
「これは以前、彼が書いたことなの」
「あなたは悲劇的な警官、私は愚かな女、そして彼自身は…堕落した逃亡者」

「私が虚構だと?」
「そうよ」
「あなたもか?」
「いいえ、私は真実で永遠なの」

中盤以降、台詞は「詩」のようになっていき、その「詩」そのものが謎かけのようでもある。

「言葉が彼らの悪夢に意味を与えた」

ちょっと敷居が高いかもしれないけれど、たいへん芸術的な作品でした。
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