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私たちはどこに行くの?のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

私たちはどこに行くの?(2011年製作の映画)
4.5
[我らのレバノンどこへ行く?] 90点

息子たち夫たちの墓参りをする黒衣の女性たちの集団が、リズムに乗って同じ動きを始める冒頭から、本作品はコミカルかつファンタジックな作品であることは明示されている。しかし、映画はそれに甘えずフィクションとして許される最強かつ最狂の解決策を提示する。宗教/男女の対立と連帯はあまりにも単純化されすぎているが、それこそがラバキ流のファンタジー世界なのだ。戦争がようやく終結して平和が戻ってきた山間部の村で、些細な事件から男たちは何かに付けて宗教間の対立へ話を持っていき、女たちは団結して衝突を回避しようと躍起になる。まるで90年代を題材にした旧ユーゴ諸国の映画、例えば『ビフォア・ザ・レイン』を思い出すような展開だが、同作が無情さや無力感を提示したのに対して、本作品では中々アクロバティックな方法で"解決"しようとしているのが興味深い。それこそが映画に許された特権であるかのように。実にパワフルだ。

出張キャバレーのダンサーたちが言語の壁を乗り越えて協力的というのも非常に面白い。この手の作品で部外者は非協力的な"外世界"の象徴として描かれることも多い(例えば『ノーマンズ・ランド』のカトリン・カートリッジとか)が、本作品では積極的に関わっている。まぁそれも一種のファンタジーではあるのだが、どちらかと言えば女性同士の連帯というよりレバノンローカルの話ではなく国際的な話とも関わりがあることの象徴のようで眩しかった。アレゴリーとファンタジーが奇妙な融合を果たしているのだ。

"迷い/放浪"であるかのような題名は、明るい未来へと向かう"決意/理解"として使用されていた。勿論、その両方の意味を含んだ題名は、正に映画そのもの、引いては世界の現状を指し示しているのだろう。そして、カンヌにも搭乗したレバノン映画『何処へ?』への目配せでもあるとのこと。『リベルテ』に賞を贈ったラバキらしい()

でも、ラバキのベストは『キャラメル』一択でしょう。女優が好きだったレズビアンの美容師の尊さたるや。本作品でも名前忘れたけど一人黒いヒジャブ被ってた人、すごい綺麗だった。
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