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夜明けの祈りのslowのレビュー・感想・評価

夜明けの祈り(2016年製作の映画)
3.9
赤十字の施設で働いていたフランス人医師のマチルド。ある日、彼女の元に切迫した様子のシスターが助けを求めにやって来る。気迫に押され彼女の修道院へと駆け付けたマチルドが目にしたのは、大きくなったお腹を抱え産気づくシスターの姿だった。

舞台となる1945年ポーランドといえば、アンジェイ・ワイダの『地下水道』とほぼ同時期。侵攻する勢力がドイツから再びソ連へと変わった頃だろうか。第二次世界大戦が終結しようが、ポーランドの悲劇は終わらなかった。
ソ連の検問などある中『地下水道』が56年に発表されたということに改めて驚く。そう考えると70年以上経った今、この内容を見せられても中途半端にも思える。決して内容がくだらないというわけではなく、そこに命懸けの覚悟が宿っていないからかもしれない。
『汚れなき祈り』や『マグダレンの祈り』でも味わったモヤモヤとした気持ち。祈りとはやはり厄介だ。修道女の助けを頑なに拒否する態度や、恥は死と同等であるような考え方。『セールスマン』で感じ切ることができなかった宗教観や倫理観と、どこか通じるところがあった。

救いを求める者と救おうとする者と、その違いは対峙していくうちに曖昧になっていき、1人の人間と人間、1人の女性と女性の対話に行きつく。この話の中で誰が弱いとか強いとか言えるだろうか。神が存在したかはわからないが、それに捧げた時間は意味のある不在を生み出した。