ノラネコの呑んで観るシネマ

許された子どもたちのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

許された子どもたち(2019年製作の映画)
4.6
これは凄い。
山形マット死事件にインスパイされた本作は、内藤瑛亮のベストだ。
同級生を虐め殺してしまった少年を軸に、事件によって人生を狂わされてしまった、狂わせてしまった全員のドラマを描く。
たとえ少年審判で無罪になっても、許されることは永遠にない。
加害者も被害者も日常を失い、煉獄を彷徨い続ける。
内藤監督は元教員だったそうだが、純粋さも邪悪さも含めてリアルな子どもたちをよく知ってるんだな。
学校のクラスで虐めについてディスカッションするシーンは、おそらくフリートークに近いのではないか。
かつての柳楽優弥を思わせる、強烈な目力を持つ加害少年の上村侑、頑なに息子を信じる母を演じる黒岩よしの親子が鮮烈。
事件の関係者の小さな世界から始まって、学校に隣近所のコミュニティ、裁判所にマスコミ、果てはネット私刑とネットを飛び出した”正義の味方”のシミュレーションまで。
現実社会のリフレクションとして、外連味たっぷりのテリングのスタイルも効いている。
この思い切りの良さは、やっぱり自主制作体制ゆえか。
小さな“大作”である。
ブログ記事:
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