Iri17

カーゴのIri17のネタバレレビュー・内容・結末

カーゴ(2017年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

10分程度しかないのに泣ける素晴らしい短編映画の長編リメイク。オリジナルでも監督を務めたベン・ハウリングが今回も監督。有名監督ではなく、オリジナル版の監督にリメイクも監督させてしまうところにNetflixの懐の深さを感じる。

ゾンビに噛まれ、発症まで残り時間わずかの男が、赤ん坊の娘を託す人を探す為に旅をするという話。短編の時は描かれなかった妻との関係やゾンビより恐ろしい人間の醜さなどが追加され、それが全く蛇足にならず、上手く作用している。ゲームの『ラスト・オブ・アス』に似ている。

また、オーストラリアが舞台であることが非常に重要な作品でもある。短編の方には登場しなかったアボリジニという存在が、この作品のキーだ。
アボリジニはオーストラリアの先住民族だが、イギリス人がオーストラリアに入植してきて迫害された。白豪主義の高まりで殺されたり、強制移住させられた。現在のオーストラリアは多文化主義を掲げ、アボリジニとの軋轢はなくなりつつあるものの、まだ完全に共生できているわけでない。
この作品では、イギリス人であるマーティン・フリーマン演じる主人公が、アボリジニの少年と手を取り合い旅をする。オーストラリアのこれからに対する監督のメッセージを感じた。

ラストは短編にはないもう一つのものを背負う。オーストラリアの未来が象徴的に描かれる。ニコラス・ローグの『美しき冒険旅行』に登場するアボリジニを演じたアボリジニの俳優がこの映画にも出ている。『美しき冒険旅行』とは分かり合えなかった白人とアボリジニが、今作のラストでは見事に共生を果たしている。

あの素晴らしい短編映画をさらに素晴らしいものにしてしまった監督とNetflixには脱帽です。

YouTubeでオリジナルの短編が観れるので、是非観てみて下さい!
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