ノラネコの呑んで観るシネマ

カーゴのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

カーゴ(2017年製作の映画)
4.3
奇妙な疫病が蔓延し、社会が崩壊したオーストラリア。
自らも感染した主人公は、発症までの48時間の間、赤ん坊の娘を託せる誰かを探して、荒野を彷徨う。
ゾンビ映画のバリエーションだが、過剰な残酷描写は皆無。
オーストリアの荘厳な自然を背景とした、詩的な人間ドラマだ。
2013年公開の7分の短編映画が元になっていて、短編版の主役も終盤に重要な役で登場する。
長編化したことによる最大の違いは、その精神性。
オリジナルが父性愛にフォーカスしたシンプルな物語なのに対し、長編版はそれを内包しつつ世界観に意味を与え、現在の世界の浄化の物語となっている。
もちろん、あんなスペクタクルな作りではないが、物語の構造は「新感染 ファイナル・エクスプレス」によく似ている。
主人公が娘を安全地帯に届けようとして、自分は入ることが許されないのも同様。
あの映画の場合、無原罪の象徴として少女と妊婦が生き残る。
こちらでは白人が作り上げた現在のオーストラリアは滅び、自然と共に暮らすアボリジニの国へと戻って行く。
その新たな理想郷に迎え入れられるのは、やはり無原罪の存在だけだ。
独特のムードをもつ異色の寓話。
なかなかに見応えのある作品だった。